捧げ物
□奇跡のような
1ページ/1ページ
日常のようになっていた奇跡は、今は別の方の隣に……。
++++++
日差しが気持ちがいい、穏やかな昼下がり。
アパートから程近い公園の一角にあるベンチに、ブッダは梵天と並んで腰を掛けていた。
イエスと二人ならどうってことのないシチュエーションだが、下界で梵天と二人というと落ち着かないというか、いたたまれないというか……。
「…………」
ブッダは無心を装いつつ、残った菓子を指で細かく砕いて鳩に与えていた。
「シッダールタ」
「はい?」
「いつになったら私にくれるのでしょうか」
「あ、すみません。食べたかったですか?」
ブッダは取りやすいように、梵天に菓子の袋を向けてやる。
しかし梵天は手を伸ばそうとはせず、自分の口を指差した。
「もしかして……。梵天さん、あなたいい年して……」
「なんと! 鳩には良くて、私には出来ないと」
「……………」
呆れてものが言えないとはこの事だ。
公衆の面前で、男が男に菓子を食べさせてやるだなんて……
「それってどんな苦行!」
拒否の意味でそっぽを向いたが、顔に穴が開きそうなほど強烈な梵天の熱視線に耐えきれなくなり、とうとう根負けしたブッダは大きなため息をついた。
「さすがにマーラより悪質ですね」
ささっと辺りを見回し、誰もこちらを見ていないことを確認すると菓子を一つ指でつまんで、お望み通り梵天の口に運んでやった。
唇に触れないうよう、口の近くで投げ込んでやろうと思っていたが、その考えは梵天によって腕を掴まれたため、あっさりと阻止された。
「……っ!!」
指ごと咥え込まれたブッダは、生暖かい舌が指を這ってくる感触に驚き、慌てて梵天の口から引き抜いた。
ブッダは真っ赤になって自分の指と梵天の平然とした顔を交互に見ながら、しどろもどろに非難の声を上げる。
「な……、ゆっ指!」
「貴方の指がお菓子よりも美味しそうだったもので、つい」
梵天はニヤリと口の端を上げ、意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「まったく、あなたはさっさと神の座から転げ落ちるべきですっ!」
からかわれたと思い、カッカしてベンチから立ち上がったブッダ。
その様子をクスクスと笑いながら、梵天もゆったりとした動作でブッダの後を追う。
彼の側にいられるという、極楽浄土では当たり前になっていた奇跡のような日常は、今はイエス様にお貸ししている。
なので今は自分の物ではない、この奇跡なるひと時を少しでも長く感じていられるよう、梵天は顔を真っ赤にしているブッダの隣に並ぶのだった。
******
相互リンクサイト『ちくわ飯』様へ!
お粗末様でした<(_ _)>
遅くなりましたが、相互させて頂いた記念として、勝手に捧げさせて頂きました。
ちくわ飯様は、私がサイトを開設して初めてメッセージを頂いた御方(*^_^*)
しかも絵も小説も超!私の好みでありまして……。
ちくわ飯様のような素敵サイト様と相互させて貰えた、あの時の嬉しさは今でも思い出せます。
ご希望をお伺いしようかと思ったのですが、その通りに書ける自信が無く、思いつくままに綴ってしまいました。
これからもぜひぜひがんばって下さい。
ちくわ飯様の小説、とっても楽しみにしてます。