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□捕えられる
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「にゃっ、にゃにをひゅるんでふか! この忙ひい時にぃ〜!!!」

(訳→な、何をするんですか!この忙しい時にぃ〜!!!)



ブッダは座っていた椅子からガタガタと立ち上がり、頬をひっぱる手を振り払いながらまくしたてる。



「おやおや、まったく短気ですねぇ。仏ともあろう方が」



わざとらしく肩をすくめてみせる梵天に、ブッダはバン!と机を叩きつける。



「私が短気なのはあなたにだけです!」



「なんと!特別扱いとは嬉しいですね」



ああ言えばこう言う梵天に、ブッダはこめかみを揉み解す。



「あーっ、もう!誰のせいでこんな目にあってると思ってるんですか! あなたが私にばかり無理難題を押し付けてくるからでしょう!」



「フフ、追い詰めるほどに輝くあなたですから」



クスリと笑って、梵天はブッダの少し赤くなった滑らかな頬をひと撫でする。



「とはいえ、少し顔色がすぐれませんね。今日はもう仕事を切り上げてしっかりと睡眠を摂って、私の夢でも見なさい」



梵天は机の上に乗り上がり、ブッダを引き寄せると素早く唇を奪った。



ブッダは突然の事で呆然と目を見開いていたが、我に返ると梵天の胸を押し返そうとしたが、その躰は頑丈でビクリともしない。



顎を掴まれているので顔を左右に振って避ける事も出来ず、ただ受け入れるだけ……



「……んっ! やめ…………っ!」



梵天は僅かに開いた唇にぬるりと舌を潜り込ませた。



「やぁ……ぁ……っ!」



驚いてブッダの舌が逃れようとする。
だが梵天はそれを許さず即座に舌を絡みつかせ、思うさま口内を蹂躙すると、さらに深い口づけをした。



ブッダの躰から、徐々に力が抜けていく。
逞しい腕でブッダの躰を抱き寄ると、梵天は名残惜しそうにゆっくりと唇を離し、苦しげに喘ぐブッダの耳元に囁いた。



「愛してますよ、シッダールタ」



その声で我に返ったブッダは、梵天を突き放そうとしていた筈の自分の手が無意識のうちに彼の衣を握りこんでいたのに気付き、あわてて離した。



ブッダは怒りか恥ずかしさからか、フルフルと肩を震わせ、互いの唾液で濡れた唇を手の甲で拭う。



「ぼ、梵天さん! 貴方は一体、な、何……!」



「何と言われましても……。私は貴方の守護神で、口づけをしたまでですが。知りませんでしたか?」



子供までいるくせに!と、くつくつと含み笑いをし、余裕たっぷりな梵天の声にブッダはもう相手にするのを諦め退室を促した。



「あなたのせいで時間を無駄にしてしまいました。
この遅れを取り戻さなきゃならないので、さっさと帰ってもらえませんか?」



「おや、私は休むように言ったはずですが。言うことを聞かない悪い子には、今ここでさっきの続きをしてしまいましょうか」



梵天は楽しそうに言葉を続ける。



「おしおき……にはなりませんね。気を失うまで可愛がってあげまから」



するりと胸に手を忍ばせてくる梵天の手をブッダはあわてて払いのける。



梵天はククッと喉の奥で笑うと、そのままブッダの手を取り、甲に恭しく接吻けた。



「この世で一番に貴方を理解し、愛しているのは私です」



ゆったりと近づいてくる梵天の顔。
もうすぐお互いの唇が触れ合う寸前で動きが止まる。



「さあ、素直に寝ますか?それとも-----」



甘くささやく声。
梵天の熱い吐息が頬にかかり、ブッダは心臓を捕まれたように胸が高鳴り、躰が震えた。



いつもは強すぎる眼光を放つ瞳が、今はやさしく眇められている。



「も、もう寝ますから帰って下さーーーーーーーい!!!」



発光しながら怒鳴るブッダの声が事務所に響き渡った。



「どうしましたブッダ様!」



ブッダの大声にあわてて駆けつけてきた愛弟子のアナンダ。



そこには至極残念と言いながらも、やたらと機嫌がよさそうな梵天と、めずらしく怒り心頭なブッダがいた。
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