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□熱に浮かされて〜神ver〜
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震える手でなんとか、ブッダの携帯で梵天さんに連絡を取る事が出来たが。
何をどう説明したのか……。
記憶が混乱して、あまりよく覚えていない。
それなのに、よく極楽浄土の神である梵天さんが来てくれたものだ。
部屋の中を心配そうにウロウロと歩き回るイエスに、梵天が声を掛ける。
「大丈夫ですよ、イエス様。極楽特製の薬を持ってきましたから」
「ありがとうございます」
イエスは少し照れたように笑いながら答える。
「ぅん……」
一声もらすと、ブッダがゆっくりと目を開けた。
ちゃんと声も高くなっている。
「シッダールタ」
梵天が素早い動きでブッダの側に寄る。
慣れた手つきでブッダの額に張り付いた髪を横に梳いてやり、迷いなく互いの額を合わせた。
イエスは衝動的に梵天をブッダから引き剥がしてしまった。
「イエス様?」
怪訝そうな梵天。
梵天さんは、ただブッタの熱を確認していただけなのに、そんなの分かってるのに私ったら……
「あああ、あの……、えっと、体温計ありますから」
苦しい言い訳が口から出る。
イエスは梵天の強い視線から逃れるように、ブッダに目を向ける。
熱のせいで頬を赤らめたブッダは、呼吸が乱れていて苦しそうなのに……妙に目が離せない。
性別が変わっただけでこんなにも感情が抑えられないなんて。
私のブッダへの愛はアガペーなはずなのに、これじゃまるで--------まるでエロ…ス……!?
イエスは自分で最凶の一撃を下してしまった。
「私、何かブッダの食べられるものを買ってきます!!!」
考えを断ち切るかのように、勢い良く立ち上がる。
玄関に走り出すイエスに梵天が声を掛けた。
梵天の表情からはあいかわらず感情は読み取れない。
「イエス様、シッダールタはバンレイシという果物が好物なんです。でもこのあたりでは見かけられませんね」
残念です、と漏らす梵天に、探してきます!と玄関のノブに手を掛けた時。
苦しげに咳き込むブッダの声が聞こえた。
思わず振り返ると、梵天の腕がブッダを引き寄せて優しく背中をさすっている。
その姿はまるで男女の恋人同士のようで……
見ていられなくなり、部屋を出るとそっと後ろ手に扉を閉めた。
雪がしんしんと降る中、イエスは傘もささずに歩く。
こんなにも胸が痛い……
いつの間に想いが変化してしまったのだろう。
大切な親友……お互い、きっと一番の友達。
それだけで満足だったはずなのに……
それじゃ満たされなくなった自分の心。
もっと特別な存在になりたいと叫ぶ、私の心--------。
小さくため息をつくと、携帯を取り出しブッダの為に動き出すのであった。