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□相合傘
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買い物を終えたブッダは空を見上げていた。



(どうしよう……)



買い物をし終え、帰ろうと外へ出たブッダは途方に暮れていた。



結構な大ぶりの雨。



あわてて出てきたから、傘を持って来るのを忘れてしまった。



松田ハイツまで何事もなく帰れるかな、とブッダは不安に思う。



雨に長い間濡れるとムチリンダ君が来るだろうし、走ると動物たちが来てしまう。



通り雨でもなさそうだし、いつ止むかわからないし。



イエスはアマゾン待ちしてるだろうし……



こうなったら一か八か、走って帰ろうとしたブッダの前にスッっと傘が差しだされた。



ちょっと変わった握りのビニール傘。



その見覚えのある傘を持つ人に目を向けると、またもや見慣れたその笑顔。



「ブッダ、お待たせ」



「……イエス!!」



その傘は私の物で、イエスは息も切れ切れに、ブッダの少し濡れた腕をハンカチで拭う。



「君の傘がうちにあったから……きっと困っていると思って」



「イエス……ありがとう」



ブッダは感謝の念を込めて傘を受け取る。
持ち手の部分がイエスの体温で暖かくなっていた。



「……そういえば、君の分の傘は?」



イエスは自分が傘を1本しか持って来なかった事に気が付いた。



「!! 忘れた……」



「イエス……君ったら、もう」



ブッタの顔にはあきれたような表情が浮かんだが、自然とやさしい笑みに変わる。



ブッダは傘を差したままイエスの横に並ぶと、肩と肩がくっつくほど寄り添った。



こうすると一人用の小さな傘でも、ギリギリ二人で入れる。



「こういうの、相合傘っていうんだってね」



ブッダがそういうと、イエスは嬉しそうに笑った。



「傘、私が持つよ」



イエスはさりげなく、ブッダから傘を攫う。



それから荷物を半分ずつ持って、アパートへと足を進めた。



「ブッダと一緒なら、雨も心地いいなぁ」



独り言のようなイエスの言葉。
嬉しいのに、なんだか恥ずかしい。


「何言ってるんだい」



そんな風にそっけなく言いながらも、顔を隠すようにうつむいたブッダは、私も同じ気分だよとぽつりと告げた。



「相合傘かぁ……」



上機嫌に鼻歌を歌っていたイエスがふとつぶやいた。



「いつもより隣を歩くブッダとの距離が近いから、私大好き」



耳元に響くその声に。
サラリと口にするその言葉に、もうブッダは耳まで赤くする事しか出来なかった。



お互い肩が濡れるのも気にせずに、二人は歩く。二人の部屋へと……



「イエス。帰ったらお風呂、行こうね」


「うん、賛成!」


++++++



部屋の玄関に不在のお知らせが挟まっているのを発見したイエスは、またもや『忘れてた』とつぶやき、がっくりとうなだれるのだった……



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読んで頂きありがとうございました。

今手がけている長編パロディでは、甘い話が書けないのでこっちでラブ補充(^^)v
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