黒ばす/夢

□必要なものはそれじゃない
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▽夢主、年上設定
▽むっくんと付き合ってる前提



**



「名前ちんー」



と変なあだなで私を呼ぶ2メートル超えの大男が私に駆け寄る。



「もー疲れたよ、名前ちんー」



まるで大きな子どもだと思う。

劉くんと福井くんが鬼の形相で駆けてくるのが見える。



「いい加減にするアル!!」


「また名前ちゃんに駆け寄るとか嫌味かお前!!
アゴリラが見たら泣くぜ!!」









まずは自己紹介からしましょうか。
私は陽泉高校3年、苗字 名前と言います。
バスケ部マネージャーの友人に代わりを頼まれて、救護ぐらいなら保健室運べばいいし…とか軽い気持ちでOKしてしました。
しかし、バスケ部には…そう、彼氏の紫原敦がいるのです。
もちろん知っていました。
知ってて引き受けました。
彼は1年で私は3年。
学年も部活も違うけれどお付き合いさせて頂いています。
日頃、ネジが緩みきって子どもみたいな彼の…むっくんの頑張る姿が見たかったのですが冒頭の通りなのです。










「名前ちん!」



ちょっと目を離すと私のところに駆け寄ってきてしまうわけで。
もう大きなわんこにしか見えない。



「むっくん…皆待ってるよ?」


「名前ちゃん、ごめんね…
アツシいい加減にしようか」



氷室くんが笑顔で言うので威圧感やらなんやらで私の顔が引きつるのがわかった。
でも当の本人はというと、



「室ちん怖いー」



と、体育館の隅っこのパイプ椅子に座った私の足にすり寄る。
少しくすぐったい。



ードサッ






「「「え?」」」



その場にいた全員が入り口を見た。
そこにいたのは…



「岡村!!」



福井くんがそう呼ぶと、



「氷室だけじゃなく紫原までえええええええええええええええ!!
何故ワシはワシはああああああああああああああああ!!」



と岡村くんは走り去っていった。



「名前さんが気にすることじゃないアル」



劉くんはそう言いながら氷室くんと一緒にむっくんを引きずっていった。
福井くんはというと岡村くんを校舎中探し回ったそうな。







結局むっくんは練習している。
バスケ自体が好きじゃないとか何とか言いつつも練習をばっちりこなす彼は頑張り屋だと思う。










時刻は20時過ぎー



バスケ部ってこんなに遅くまで練習してるんだ、と関心しながらむっくんと共に帰路につく。
後ろから岡村くんの嘆きとそれを宥めているのかいじっているのかわからないが、劉くんと福井くんの声が聞こえる。



「名前ちんー
手ーつなご?」



平均より少し小さな私の手はもちろんむっくんの手より小さくて。
綺麗な紫色の髪に見とれているとその大きな手が私の手を握った。



「名前ちん、手小さいね」


「むっくんが大きいだけだよ」



私が手を握り返すとむっくんは嬉しそうに微笑んだ。



「今日はありがとね」



歩きながらかなり上にありむっくんの目を見ながら言ってみた。



「んー?
何で名前ちんがお礼言うの?」



むっくんが不思議そうに私を見るのが可笑しくて。



「むっくんが頑張ってる姿見られてよかったなって…ね?
すっごくかっこよかったよー」



そう言ってへへっと笑うと手を繋ぎながら少し前を歩いていたむっくんにぐいっと手を引かれた。
バランスが崩れて倒れそうになったが気づいた時にはむっくんの腕の中にいたのだ。
顔に一気に熱が集中するのがわかって恥ずかしくなる。



「む、む…むっくん?」


「ほんとに…かっこよかった?」



顔は全く見えないが口調からするに照れているのだろう。



「うん」



そう答えるとむっくんは私肩に顔をうずめながら嬉しそうに言った。



「名前ちんに言われるの嬉しー
オレ、バスケ好きじゃないけど名前ちんがそうやって言ってくれるから頑張れるんだー」



間延びしたようにそう言う。
それから、



「名前ちんー
キスしよー」


「へ?」



いきなり何を言い出すやら。



「オレ今日も練習がんばったし
ご褒美ほしいー」


「じゃ、じゃあコンビニ行こうよ!
まいう棒の新味出たみたいだよ!」



むっくんとは何度もキスしている…が恥ずかしさは未だに消えてくれない。
日頃はネジが緩みきって子どもみたいなのにバスケでは急にかっこよくなったり。
かと思うとキスする時はすごく色っぽい表情したり。
もう年上だってどぎまぎすることあるんだよ!!、って言いたい。



「名前ちん…オレとキスするの嫌?」


「へ!?
ち、違うよ!!
あ、コンビニ着いたっ
むっくんの好きなお菓子買ってあげるね!」



むっくんの手を引いてコンビニに入る。
まいう棒の新味を2つとボリボリ君を1つ、ポテチを1袋買ってコンビニを出た。



「むっくん…」



むくれてしまったむっくんを呼ぶ。



「もーそんなにむくれないでよー」



コンビニの駐車場の一角に座ってボリボリ君をかじってみる。
ほんとにむっくんはむくれてしまうと長い。
大きな…大きすぎる子ども。
まあそこが可愛くて好きなんだけど。



「むっくーん」



ぴとっとむっくんの頬にボリボリ君の食べかけをくっつける。



「名前ちん、冷たいー」


「はい!
もーむくれてないであーんして?」



しばらく何か考えた後、むっくんはボリボリ君の食べかけをかじった。
だが食べ終わるとむっくんはまた思い出したかのように黙った。



「むっくーん?」


「名前ちん…
キスしよー?」



あきらめが悪いところもまさに大きすぎる子どもだ。



「もー…」


「名前ちん…したい」



私はどうも押しに弱いようだ。



「じゃ、じゃあ!!///
もう少し暗いとこ行こ!!
コンビニ明るすぎ!!」



私がそう言うとむっくんは嬉しそうに笑って手を掴んだ。







しばらく歩いているとむっくんが立ち止まった。



「もういいー?」


「うん///」



むっくんと私の身長差は50センチ程。
むっくんは屈まなければいけないし、私は背伸びせねばならない。
目を瞑ってくっと背伸びするとむっくんが腰をホールドしてくれる。
車の通りも少なければ歩いている人もいないが、ぽつんとある街灯が恥ずかしさを駆り立てる。
顔に熱が集まるのがわかってもう逃げ出したい。
しばらく目を瞑っていたのに唇が触れない。
確かに身体はがっちりホールドされているのに。



「むっくん…?」



ふと心配になり目を開ける。



「あーだめだよ
目ー開けちゃ」



そう言ったむっくんの色気に私はやられて思わず見とれてしまった。



「むっくん!!!!///」


「なあに?」


「年上だってどぎまぎするんだよ!!///
むっくん…するなら早くして!!///」



それでもむっくんはキスをしない。
私の顔を嬉しそうに見ているだけ。



「名前ちん…可愛い
食べちゃいたい」



あまりにも長い間私の顔を眺めているだけだったからつい気を抜いていたらむっくんはそう言った。



「へ?」






ーガリッ



顔を上げたと同時に唇に痛みが走った。



「名前ちんが食べたい…」



その痛みがむっくんによるものだと気づいた時には遅かった。
驚きと痛みで少し開いた唇にむっくんは大人のキスをした。










「むっくんのばかあ!!!!///」


「名前ちん、ごめんって」


「びっくりしたじゃん!!!!///
あんなの初めてだったんだから…///」



ほんとに食べらるかと思った。



「ごめんって…」



頭撫でながら抱きしめてくれるむっくんがやっぱり好きで怒るに怒れないし、嫌じゃなかったし。
でもあまりにも恥ずかしくて未だに顔が上げられない。



「名前ちん…
さっきもちょっと言ったけどオレ、名前ちんがいるから頑張ろうって思うんだよー」



またもやいきなり、だ。
でも続きを聞く。



「バスケなんて向いてるからやってるだけだし
でも名前ちんがかっこいいとか頑張ってとか言ってくれるから頑張るんだー」


「…うん」


「頑張るにはお菓子より名前ちんが必要なんだよー」



あまりにも嬉しくて顔が上げられなくなったなんてのは秘密。
私にすり寄るむっくんの背中にそっと腕を回した。




ー必要なものはそれじゃない




貴女がいれば頑張れる。

(紫原:名前ちん、帰ろっか)
(名前:ま、待って…腰抜けた…)
(紫原:じゃあ抱っこしてあげるねー)
(名前:ーっ!!!!///)



*****



むっくん難しい…むっくんですかね(´・ω・`)
大きすぎる子どもを目指してみたらこうなりました←

ちなみに主は今吉先輩の次にむっくんが好きです!!

陽泉は結構賑やかだと思うんですよね、もう少し劉くんしゃべらせたかったなあ

ではここまでお付き合い頂いた 名前様、ありがとうございました
引き続き、当サイトをよろしくお願い致します
感想等もお待ちしております

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