―Novel―

□しょっぱいモンブラン
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「パスでやんす〜」

間の抜けた声でパスを
要求する栗頭の栗松を悩ましげに
見ている巨漢が一人

「ハァ…」

「どうした壁山具合悪いのか?」

風丸が心配そうに
ため息ばかりついている
壁山に尋ねる

「あっ!えっと〜
なんでもないッス」

顔を赤らめて壁山は
その場をその姿からは想像
出来ないほどのスピードで
去っていった

「…速い」

風丸は新たなライバルが
できた気がした

その様子を遠くから見ていた
春奈はポツリといった

「これって恋ですね♪」

「え?」

そばにいた秋はビックリして
持っていたスポーツドリンクを
落っことした

「栗松←壁山←風丸…
うふふふふふふふふふふ」

「…(この子って
腐女子だったんだ)」

紫のオーラを出している春奈と
それを引いた目で見ている秋

ー練習の休憩時間ー

「あぁざぁぁっっっっっっふおじぇせさわふっひk??!!」

突然栗松が奇声を発した

「黙れ栗星人うるさいぞ」

「鬼道もうちょい
オブラートに包んで言えよ
栗が涙目だぞ!」

「キャプテン達ちゃんと
オイラの名前を言って
くださいでやんす」

栗松は本気で泣き出した

「くくく栗松さん
一体どうして叫んだッスか?」

壁山は栗松にさりげなく
助け船を出した

「オイラのスポーツドリンクが
空っぽでやんす〜」

「ふ〜ん」

豪炎寺が興味なさそうに
相づちをうつ

「誰かがオイラの
スポーツドリンクを
飲みやがったでやんす!!」

カッと栗松は般若のような
形相で部員達を睨みつけた

しかしさっきから
栗松の表情変化はうざいくらい
豊かである

「あぁ〜なんだろう?
今日はスポドリが
メチャクチャうめぇぇぇっ」

不動が憎たらしい笑顔で
スポーツドリンクをゴクゴクと
美味しそうに飲み出した

「やめなよ不動くん!
おっと手が滑った」

わざとらしく吹雪は
スポーツドリンクを栗松に掛けた

「何しやがるでやんす!
さては貴様らが犯人でやんすね?
この野郎!!」

栗松がサッカーボールを
二人に蹴りつけようとした
時秋と春奈がちょうど来た

「栗松くんごめんね〜
さっきあなたのスポドリだけ
落っことしたのよ

はい!新しいスポドリ」

ニッコリと優しい微笑みを
浮かべて秋は栗松に
スポーツドリンクを
差し出した

その後苛立った部員達に
栗松がフルボッコされたのは
いうまでもないだろう

「うぅぅぅ…
ちくしょうでやんす」

「く、栗松さん!」

壁山が救急箱を持って
栗松の元に駆け寄ってきた

「壁山…?」

「あぁひどいケガッスね
大丈夫ッスか?」

自分に唯一優しくしてくれる
壁山に栗松はポロリと
涙を見せた

「栗松さん!!?
痛かったッスか」

「違うんだ壁山ぁ
グスン…グスン…
壁山は優しいでやんすね」

涙に濡れた顔を壁山に
近付けていく栗松

「!!!!」

壁山はドキリとした

(この展開はまさか
キスッスか!?)

壁山はスッと目を閉じた

「?」

しかしいつまで経っても
唇に何も来ない
業を煮やして目を開けると

ブビィィーンと何とも
小汚ない音を経てて
栗松が壁山の服で鼻水を
かんでいた

「…え」

「フゥ壁山ありがとでやんす
それじゃあさっさと帰れで
やんすよ〜」

栗松は放心状態の壁山を
置いてとっとと帰っていった

残された壁山は栗松の
鼻水まみれになった服を見て
ため息をついた

(この恋は報われるんスかね)

ー終われー
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