―Novel―

□Good morning
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初夏の風吹く、本日は五月晴れ



それなのに私は 部屋にこもっている

こもっているというよりは…目の前にいる人物の寝顔をずっと見つめているから






別に見ようと思ってこいつの部屋に入ったわけではない





天気予報で今日が晴れだと知ったとき、

「一緒に特訓しようぜ!」



って言ってきたから、早朝6:00にグラウンドで待っていたけど
待てども待てども来なかった


部屋に来てみたら、奴はぐーすか寝ていたわけ




…まあこんな朝早くに起きられるなんて思ってはいなかったが








そして往復ビンダしようと、顔を覗き込んだら



ずっと見続けていたいほどの
美しい顔があった





凹凸のはっきりした顔
長いまつげ、整った眉
高くて小さい鼻

ツヤのいい少しだけ日に焼けた肌


顔だけ見たら、こいつは美形なほうだ






その可愛い寝顔に
往復ビンタの刑は保留となってしまった



規則正しい寝息をたてて、いまだに
眼を開ける気配はない












「バーン」


一応声をかけてみるけど、返事はない

…本当に起きる気配はない


だったら、少し触れてみてもいいかな


という衝動に駆られた







そしてその顔に
そっと手を伸ばす








「?!」


その瞬間、私は手首を強い力によって引っ張られた


視界が真っ白になって、
状況を理解できるようになった頃には

さきほどまで寝ていた相手が目の前にいた



「なに?」


「……へ?」





私は バーンの「なに?」という問いかけになんとも間抜けな返答をしてしまった


「さっき俺のこと呼んだじゃん」









「……へ、返事するのが遅い」


「もっと揺り起こしてくれればよかったのに」


ニヤニヤ笑って余裕を見せる

私はいつも通りの顔で対応する



「熟睡していたから悪いと思った」


「そんなに俺の寝顔見てたの?」


「…っ!ち、ちがう///」


私は顔が赤くなるのがわかったので
バーンから視線を逸らした


「ふーん…じゃあこの手はなに?」


そう言って、つかんでいた私の手を見せ付ける


「…ビンタしようと思った」



「なんだ、それ」


と、軽くあざ笑われた









すべてを見透かされている気分


私がこう反論することも
私が寝顔を盗み見ていたことも




私が素直に言ったら、バーンはどんな反応するんだろうな



「バーン」


「ん?」


「お前の寝顔が可愛かったから見てただけだ」




しばらく ん?と聞き返したままの顔で

でもとたんにその表情は激変した



「な、なななな何言ってんだよ!!!??」


「…私が見ていたこと知っていたんだろ、お前」



「…知ってたけどこんなふうに言われるとは思ってなかったからさー!!」




ふ、どうやら今日は私の勝ちのようだ



私はひとりでバーンとの勝敗を決め付けた



「ま、俺の顔見てくれてるお前のほうがもっと可愛かったけどな!」





私の頭をくしゃくしゃと撫でるバーン






「……ば、ばかじゃないのか」














バーンは本当に悪いやつだ



練習に遅れて、ビンタしようと思ったのに
寝顔の可愛さでそれも止めて


今日も勝ったと思ったのに、結局私がなにも言い返せなくなってしまった





朝は低血圧で機嫌が悪いはずなのに

今日はからだの調子が朝から良い









「バーン、今日の練習はエンジン全開で行くぞ!」
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