―Novel―

□雪原の皇子
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僕は木枯らしの街を染岡くんと二人で歩いています

だけど、不思議と寒くない



それは 染岡くんと二人でいるからかな










「染岡くん、染岡くん」


「なんだ?」


ぶっきらぼうに言うけど、本当は優しい


「見て、ウエディングドレスだよ!」

「あぁ」

「染岡くんにぴったりじゃない?」

「は?」


「だって、僕は王子様っぽいってみんなに言われるから…
お姫様は染岡くんだよね」

「はぁ?!意味わかんねーし

第一、俺が王子でもお前を姫にしようとも、俺が姫でもお前を王子には選ばねぇよ!!」



かわいいでしょ?ツンデレなんだ、彼



「ねえ」

「くだらねぇことならいいぞ」

「冬に咲く薔薇ってわかる?」



真剣なまなざしで僕が聞くから、先ほどの怒っていただけの面持ちとは
また違った表情で彼は僕を見つめた








「君にあげるよ」


「いや、別に花なんて…」


「合宿所の窓辺に咲いてたんだ

染岡くんにぴったりだと思って」

「お前の頭ン中では俺はどんな男なんだ?」



やれやれ、と疲れきった顔の染岡くん



そう、君を困らせていいのは僕だけ
君の隣を歩いていいのは、君と話していいのは…



なんて



こんなに欲張りだといつか罰が当たっちゃうかも











「寒いね」


「…ほら」



そういってゴツゴツして大きい手のひらを僕に差し出す


「手をつなごう」っていう合図





12月だから寒くないはずないこの季節

僕のマフラーも北風になびく





もしも、染岡くんの眼がほかの人に横滑りしそうになったら

僕の長いマフラーで縛っておいてあげる





……いつからこんなに女々しいこと考えるようになったの?





女みたいにやきもちやいて、手を焼いて…




女みたいに…





「染岡くん」


「何度目だ」


「やっぱり、僕にとって

染岡くんは皇子様だよ」









「は?」


「ウエディングドレス、僕のほうが似合うからね」



「なんなんだよ!ナルシストが!!」




染岡くんはさりげなく道の右側を歩いてくれてる

これってジェントルマンの証なんだっけ…

日本は左側通行で車側を歩いてくれてるから…


うん、やっぱりジェントルマンだ







いつもいつも僕が好き過ぎてるように見えるけど


染岡くんもこうやって、僕に好意を示してくれてる





木枯らしの街も寒くないはずだね


本当に君って、雪原の皇子
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