―Novel―

□ちょっと心配性
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「円堂守さん」

「ん?どうしたんだよ音無」

放課後のほとんど誰も居ない
廊下で部活のマネージャーの
音無が声をかけてきた

「なんでフルネーム
呼びなんだよ」

フルネーム呼びが
某エイリア学園の麗しい
髪マフラーの人物とリンクして
少し笑ってしまう

「今日はマネージャーとしてで
なくて、ただの音無春奈として
円堂守さんにお話があって
来たからです」

「…?話って」

「分かりませんか?」

今日の音無は妙によそよそしい
と思いつつ何かしてしまった
かと必死に思考を巡らせた

「お兄ちゃんの事です」

「ッ!!!!!」

答えを待ちくたびれた音無は
少し苛立たしげに言った

その瞬間円堂は全身の血が
サッと引いたのを感じた

「円堂守さんは今からちょうど
三日前の午後6時ジャストに
お兄ちゃんに告白すると
同時にキスまでしましたね」

「あ、その」

「その後お兄ちゃんに有無を
言わさず押し倒して
お兄ちゃんがお嫁…お婿に
行けなくなるような行為を
しましたよね?」

「違っ」

「何が違うんですか?
ずっとその時見てたんですよ
言い逃れなんてさせませんよ」

音無は先程から張り付けたかの
ように笑顔のまま眉一つ
動かさずに坦々と喋る

「場所が室内ならまだしも
まさか初めてで屋外なんて…
お兄ちゃんさぞかし屈辱だった
でしょうね

同性に、しかも
尊敬していた人物に
犯されるなんて」

「やめ…止めてくれ音無」

円堂は思わず耳を両手で塞いだが
その手を音無がすごい勢いで
ひっぺがした

「現実から目を背けないで下さい
でもその行為の結果二人で
話し合って両想いだったって
分かって幸せに付き合えてる
じゃないですか」

あの時…練習後に突然
身体が熱くなって焦っていたとき

『円堂大丈夫か?』

愛しい人物鬼道が
心配そうに付き添ってくれた

『鬼道…初めてあったときから
好きだったんだ』

『え?円堂』

『最近音無に指摘されて
気が付いたんだけどさ
オレ初めて恋してるんだ』

鬼道の顔がみるみる朱に
染まっていく

『おまっお前!
熱があるんじゃないのか?』

焦っている様子がかわいくて
思わずキスをしてしまった

『のぎゃぁぁぁぁっ!!??
いいいいいい今何をしたんだ』

『鬼道好きだ…』

そこから先はよく覚えていない

「音無…」

「お兄ちゃんを泣かせたり
悲しませたりしたら
許しませんからね?」

ニコッといつものような笑顔を
浮かべる音無に思わず全身の
力が抜け円堂はその場に
座り込んだ

「探したぞ円堂!っと
春奈か?珍しいな二人で
何してたんだ?」

トコトコと鬼道がやって来た

「乙女の相談してたのよ♪
お兄ちゃんはこれから帰り?」

「あぁそうだ円堂と約束して
いたんだ」

「そうだったんだ
じゃあ気を付けて帰ってね」

「春奈もな」

音無はその場から
走り去っていったが円堂は
未だに座り込んだままだった

「どうした円堂?帰るぞ」

「おぅ、わかってる…」

ゆっくり円堂は立ち上がり
鬼道と楽しく会話しながら
帰路についた

その二人の後ろ姿を
陰から音無は見ていた

「これでお兄ちゃんに
近付く悪い女どもは安心ね
キャプテンだってあそこまで
脅せばお兄ちゃんに酷いこと
出来ないだろうし…」

ぶつぶつと独り言を呟く
音無のポケットから小瓶が
落ちた

「あ、まだこれ余ってたんだ
スポドリに混ぜてみたけど
効果抜群だったな」

《即効性媚薬》

小瓶のラベルにはそう
書いてあった…

「お兄ちゃんは守るからね」

-end-
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