人を好きになる条件
□Story 1
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翌日――。
私は自分の姿を鏡に映しておかしなところは無いか何度もチェックする。
これから、父さんの婚約者の家に挨拶をしに行くためである。
昨日は本当に何もかもが突然で混乱しそうだったけど、今はなんとか落ち着いてきた。
「若葉ー、準備できたか? そろそろ行くぞー」
「はーい」
私は最終確認を済ませ、父さんの元に向かった。
「さあ、着いたぞ」
「…うん」
私はごく普通の一軒家を前にしているだけなのに、これから戦場の中に突入するかの様な心境に陥っている。
落ち着いてきたと思ってたけど、やっぱりダメだったみたい…。
「どうした、緊張してるのか?」
「そりゃ、緊張もするでひょ!」
うわ、最悪…。
上手く喋れないし、声も震えてる。
「…………」
父さんは無言で私を見つめると、そっと手を伸ばし私の頭を撫でた。
「さすがに急だったよな、ごめん」
「ううん、大丈夫」
頭を撫でてもらって落ち着いてきたのか、さっきよりマシになった。
父さんも大丈夫そうだと思ったのか手を戻した。