人を好きになる条件
□Story 2
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新しい家族と出会って2週間が過ぎようとしていた。
あれから私と父さんは陽子さんの家に引っ越してきた。
正式に家族になる前に、お互いを知るためと言っていた。
それが単なる口実じゃないことを願う。
父さん曰く、陽子さんのこの家は前の旦那さんと離婚した際に慰謝料としてもらったものなんだとか。
一応、部屋があまっているということで、私たちはアパートから引っ越して一緒に住むことになったんだけど、落ち着かない。
住み慣れたアパートからいきなり一軒家に移ると、まず広さが気になる。
「はぁ…。あの古いアパートを恋しいと思う日が来るなんて思わなかった」
私はため息交じりに独り言をこぼした。
「こんな広い家に一人でいるっていうのがなんか落ち着かない」
今日は日曜日。
父さんは旅行会社に勤めているから、休みが不定期で基本週末は仕事だ。
陽子さんは化粧品会社で働いていて、父さんと同じく休みが不定期らしい。
そんな休みが不定期な二人がよく上手く付き合っていけるななんて聞いたときは驚いた。
千秋くんと冬真くんはバスケ部に所属してるらしく、部活の練習に行っている。
夏樹さんは友達と勉強してくるって言って、朝早くから出かけてしまった。
春斗さんは…。
「あれ? そういえば、春斗さんはいるんだっけ?」
春斗さんは未だ謎な人。
陽子さんに23歳ということだけは聞いたんだけど、それ以外は何も分からない。
陽子さんは放任主義者らしく、麻薬だとかヤクザとかそういった法に触れることさえしなければ基本何をしてようと口出ししないらしい。
だから、陽子さんも春斗さんが今何をしているのか分からないと言っていた。
基本、春斗さんと家の中で遭遇することがない。
本当にあの人は何なんだろう。
「き、気になる」
どうしよう…。
すっごく気になってきた。