人を好きになる条件

□Story 1
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ピンポーン――。

「はーい!」

インターホンを押して数秒で返事があった。

「いらっしゃい!」

ドアを開けたのは、とても優しそうな女性だった。
その人を見た瞬間、ああこの人は父さんの好きな人だと何かが伝えた。

「あら、彰さん! いらっしゃい」

女性はとても優しい笑顔で父さんを出迎えた。

「こちらの可愛らしい女の子はいつも話してくれてる若葉ちゃん?」

「ああ、そうだ。僕の自慢の娘だ」

自慢の娘なんて言われたのが初めてで少し照れたけど、それを表情に見せるのが癪で俯いて表情が見えないよう挨拶をした。

「初めまして、若葉です」

「初めまして。彰さんからいつも話は聞いてたわ。会えるのを楽しみにしてたの」

「ありがとうございます」

「あ、自己紹介がまだだったわね!私は藤宮陽子。『お母さん』って呼んでくれると嬉しいけど、嫌だったら好きなように呼んでくれて構わないからね」

陽子さんは優しくそう言ってくれた。
私は本当のお母さんのことは知らないけど、もし私にお母さんがいたら、きっとこういう人だったんじゃないかなと思った。

「……ん?」

何か違和感が…。
なんだろう。
ああ、そうか。苗字が私たちと一緒だからだ。

「どうかしたのか、若葉?」

父さんが小首をかしげてる私を不思議そうに思い、声を掛けてきた。

「いや、もう籍入れたんだなと思って」

「籍? いや、まだ入れてないぞ。けど、今週中には入れる予定だ」

父さんと陽子さんは少し顔を赤らめた。

「え!?」

混乱してきたぞ。
つまり、どういうことだ??

「もしかして彰さん、名前のこと伝えてなかったの?」

「ああ、そういえばすっかり忘れてた!」

父さんは手をポンと叩くと、楽しそうな顔で笑いながら教えてくれた。

「実はな、ここの家族も僕らと同じ『藤宮』って苗字なんだ。だから再婚しても苗字が変わらないんだ」

「ええええっ!?」
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