人を好きになる条件
□Story 1
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確かに『藤宮』という性は珍しくないけど、そんな偶然ってある!?
「どうだ、ビックリしたか?」
父さんはニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
それが何だか妙に腹が立ったので、とりあえずすねを蹴飛ばしておいた。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
断末魔らしきものが聞こえた気がしたけど、今の私にそんなことを気に掛けるつもりはない。
「改めてよろしくお願いします、えっと…陽子さん」
『お母さん』って呼ぼうか迷ったけど、初対面でいきなり会った人を『お母さん』なんて呼べるわけもなく、無難に『陽子さん』と呼ぶことにした。
「よろしくね、若葉ちゃん」
陽子さんはにっこりほほ笑んだ。
「よっ陽子、僕の心配は…?」
父さんは未だ痛みに悶絶していた。
「それぐらいで死ぬわけでもなし。心配する必要もないでしょ」
…………。
どうやら陽子さんは見た目とは裏腹に意外と凄いことを言う人だった。
「こんな所で立ち話もなんだし、どうぞ上がって」
「あ、お邪魔します」
「ちょ、待ってくれー!」
痛むすねを引きずりながら歩いてくる父さんを無視して私は一人で陽子さんの後について家に上がらせてもらう。
「さあ、どうぞ」
リビングに通され、ソファに腰かけてすぐに用意しておいてくれたのか紅茶を出してくれた。
「ありがとうございます」
「彰さんに若葉ちゃんはコーヒーより紅茶が好きだって聞いてたから紅茶にしたんだけど大丈夫だったかしら?」
「はい、紅茶好きなんで嬉しいです」
陽子さんは本当に素敵な人だな。
私の好みを事前に調べておいてくれたみたいで、出されたお菓子も全部私の好きなものだった。
きっと父さんは陽子さんのこういうところが好きになった理由の一つなんだろうな。
私は出された紅茶を飲みながらリビングを見渡した。
とても落ち着いた感じで、初めてお邪魔したのにリラックスしている自分がいるぐらいだ。