短編・中編本棚
□君ともう一度恋を
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《椎名said》
僕の弟‥大切な俺の弟は心に深い傷を負っている。
今も涙を堪えながら俺に聞くのだ。
『シ・ィちゃん僕の瞳はやっぱり気持ち悪いかな‥?』
セリの瞳の色は薄い紫色。
日本人いや‥他の国を探してもこの瞳の色をしているのはセリだけかも知れない。
その所為でこの学園に編入するまでイジメを受けていた‥。
本人はちょっと仲間外れにされただけだと、へらりと笑い言ったが俺はその言葉だけは信じられなかった。
セリには先祖返りと伝えられてはいるが、実際には先祖に紫の瞳の人物は居ない。
その真実は俺を含め両親はセリには伝えはしなかった。
セリが生まれ父は母の浮気を疑った、けれど母の性格では浮気なんて出来る人ではない。
そしてDNA鑑定をし父はセリが血の繋がりのある息子だと分かった途端、セリに対する対応が変わり、今では溺愛するほどだ。
でも俺は単純な父で良かったと思っている。
所詮データーでしか信用出来ない馬鹿だ。
もしデーターを信用せずセリを虐げるを様な糞な父じゃないのには感謝だ。
セリは俺の可愛いくて愛しい弟。
血の繋がりなんて無くても俺はセリを好きに成る自信が有る。
それほどに俺は芹菜を愛してる。
不安そうな顔をしながら俺を見つめるセリ。
そっと頭を撫でてやれば、俺の胸元に抱き着いてくる。
「シィ‥ちゃん」
だから俺はセリが1番に欲する言葉を伝えるんだ。
「セリ・・芹菜の瞳は綺麗だよ。僕はその瞳も何もかも好きだよ」
瞳を見つめ真実を告げる。
「シィちゃん・・シィちゃんっ‥」
するとセリは声を上げ泣きだした。
なあ芹菜‥笑顔になってくれるなら俺は何でもする。
だから‥
「芹菜‥泣かないで?僕に笑顔をみせて?」
むせび泣きながら、セリは笑みを作る。
「シィ‥ちゃん?」
それにしてもあの夢を見た後の芹菜は脆い。
少し気を付けないとイケない。
それにしても首を傾げるセリ‥可愛いなぁ‥。
「ふふっ‥やっぱりセリは笑顔似合うね」
「ふぇ?シィちゃん‥なっ何か恥ずかしくなってきた!」
だいぶ落ち着いたのかセリの表情は明るくなる。
「可愛いよセリ‥。ほらそろそろ行こう?ご飯食べる時間が無くなっちゃう」
「うぅ‥。ごめんなさいシィちゃん‥。泣いたりして。」
「大丈夫だよ‥。言ったでしょ?僕はセリを守り続けるってだから謝らないで。」
俺の言葉を聞き終えたセリは笑みを作り笑った。
「シィちゃん‥ありがとう。」
本当に綺麗な笑顔で笑った。
「どう致しまして‥さぁ行こう」
俺はセリの体を離すと再び手を繋いぎ食堂へ向かった。