旧 魔王の帰還(更新凍結)
□魔王帰還〜魔王の言うことは絶対です〜
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その1
〜食事時は静かに美しく〜
王様の帰りが学園中に知れ渡ると同じく、全生徒達に伝えられた事があった。
それを知らないのは、転入生愛川及び信者達。
けして意地悪で伝えられなかったのでは無い。
その証拠に信者達の親衛隊は蔑まれながらも伝えようとした。
だが彼らは聞く耳を持たず、親衛隊に罵声を浴びせ去って行ったのだ。
その様子を知った親衛隊総括は王の恐さを知らない、信者達に嫌気がさし頭を抱え大きなため息を吐き出した。
(語り 大地)
夕刻の食堂は昼間とは違う空間へと変わっていた。
愛川及び信者達は怪訝そうに食堂を見つめる。
そして真っ先に声を上げ話し出すのは、やはり愛川である。
昼間散々な扱いを受けた愛川は、いつもの罵声に便乗しその辺に居る生徒に八つ当たりするつもりだった。
「何だよこの空気?!まぁお前らやっと俺が言ってた事を理解したんだなっ!」
けれど誰もその声に反応する事無く、食事を続ける生徒達。
「何だよっお前ら無視するなんて最低だっ!」
シーン…。
いつもなら返ってくる罵声も刺々しい視線も無く一人騒ぐが、拍子抜けした愛川は口を閉ざすと、いつもの様に役員達と同じ席に向かおとする。
けれど階段を登ろとした瞬間、背後から誰かに手を引かれ止められてしまう。
「君は役員じゃ無いのだから一般席に座る様に」
和風美人な小柄な生徒が愛川の行く道を阻止すると、信者達の表情は変わる。
「なんだよ?!俺はコイツらと友達なんだ、だから一緒に夕飯を食べるんだ!離せよ!」
「それは認めないよ。ならば役員共々一般席で食べるといい。一般生徒はこの階段を通らせない。」
「どこで食べようがお前に関係無いだろ!ほら離せっ?!」
「ねぇ役員そして転入生の信者達?
僕が怒らない内にさっさとソレ連れてどっかに消えろよ」
呆れた様に声を出しながら生徒は言葉を続ける。
「ほら消えろ。もうすぐアイツが来る。後悔するのはお前らだと思うけど」
「なんで…?!南雲先輩が此処に居るんだよ確かあの時…」
「その節は大変お世話になりました風紀の副委員長様?
俺の後釜の癖に好き放題しやがって。
稜牙に怒られるのは俺だぞ、分かてんのか糞共め」
喋れば喋るほど南雲の口調は悪くなる。
「おら分かったなら消えろ。それとこれからは俺が風紀の副委員長様だ。
山吹貴様は用済みだ」
南雲は淡々と山吹に用無しと告げればニヒルに笑う。
「さぁ分かって貰えただろうか?
貴様らに役員席に座る資格は無い。
書記ぃ?!お前も時間の問題だぜ?」
「お前何て酷い事を言うんだよ!お前みたいな奴が風紀とか有り得ないっ?!だからその発言を取り消して湊に謝れっ!」
「馬鹿じゃねぇっ…低俗で無能な子猿風情が俺に意見するんじゃねぇよ」
南雲の目付きが段々と険しくなり、雰囲気が変わる。
「そこまでだ南雲!お前に暴れられては食堂が壊滅する」
タイミングよく現れるのは、風紀委員長の水城だった。
過去には仏の委員長と呼ばれた水城だったが、最近では仏どころか閻魔様へと変化していた。
今もまさに、水城の眉間には深いシワが刻まれ、顔色もあまり良いとは言えない。
全ては転入生愛川が原因なのだが、まだ仏の名残が残っているらしく、殺意は芽生えるがその怒りを抑え唇を引き攣らせ笑みをつくる。
「水城、コイツら口で言っても分からねぇんだし一回位とっちめようぜ」
ボキボキと拳を鳴らし、冷笑する南雲は過去にその容姿とは似合わない、別名があった。
それは鬼と呼ばれ、稜牙より沸点も低く暴力的で、副委員長時分には、仏と呼ばれた水城になぞらえ、南雲は鬼の副委員長と陰ながら呼ばれて居た。
仏から閻魔へと変わりつつある水城を除き、鬼の風紀副委員長南雲と、そして魔王琉咲はこの学園で逆らってはイケない大変危険な人物達である。
(大地 談)