BACCANO!

□次の日(グラクリ)
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ここはアメリカシカゴ。朝日が昇り、眩しい光がNYの街を照らし出す。
同じくその光に包まれた屋敷の一つ、ルッソ邸。まだ時間が早いせいか、屋敷の中は静かで空気も冷やりとしていた。その中の一つの部屋で、この屋敷で最初に起きた男が目を覚ます。
「ん・・・」
自分が入っているベッドの中でもそもそと動き、男―クリストファー・シャルドレードは近くに置いてある時計に目を向ける。
その目は本来白であるべき場所が赤く、瞳の周りは白というまるで吸血鬼を思わせるようになっており、もう一つ付け加えると、歯もイルカのように全てが犬歯となっていた。
「あぁ、もう朝か・・・ふわぁあ・・・」
まだ眠たげな眼を擦りながら、今現在の時間を確認する。
だが、段々脳が起きてくるとある疑問が浮かぶ。

―・・・。え?朝・・・?

次の瞬間ガバッ!と起き上がり、周りを見渡す。
部屋自体に灯りは付いてないが、カーテンの隙間から入ってくる光によって部屋の様子は大体わかる。
次に自分の格好を見て、赤い服は着ているがいつもの黒い貴族が着るような服を着ておらず、もう一度部屋を見渡すと小さいテーブルの上に置いてあるのを確認した。

―昨日、自分でここに来た記憶は無いし、服を脱いだ記憶もない・・・

クリストファーが必死に、昨日どうやって過ごしていたか思い出そうと唸っていると、自分の横で何かが蠢いた。
「・・・?」
自分が入っていた毛布の中に自分ではない誰かがいる。
恐る恐る少し捲ってみると、金髪が見えた。
それを見て一気に捲り上げる。
「っ!!さむっ!な、なんだ!?今オレに何が起きた!?オレは南極にでも放り出されたのか!?寒い!起きてすぐこれとはなんて悲しい話だ!!」
本当に今起きたのかと疑うくらいに無駄に長いセリフを朝っぱらから口にする金髪の男―グラハム・スペクターは、一人用(それでも普通より大きめ)のベッドの上でゴロゴロと、しかし落ちないように、転げまわる。
それを冷めたような目つきで見ていると、グラハムはそれに気付いたようでこちらを向いてピタリと動きを止める。
「今起きたとか嘘だよね?」
微笑みながら、半分確信を含んだ感じでクリストファーが問いかける。
「うん。本当はもうとっくにと言うか、お前が起きたと同時に起きたと言っても良い。」
何も申し訳ない事がないように堂々と答えるグラハムに、冷たい目線のまま言葉を紡ぐ。
「なんで言わなかったの?」
「いやぁ、本当は起きた時にすぐおはようとか言おうと思ったんだが、お前が急に起き上がったり周りをキョロキョロ見回したりしてたから・・・」
「してたから何?」
自分が起きてから今に至るまでの短い時間で、自分の行動を一部始終見られていたと知って、恥ずかしくなって顔が赤くなろうとしたが、既のところで冷静を保ち、問い詰めたが。
「可愛いなぁと思って。」
言わなければ良かったと思った。
先程、折角冷静さを保てたのにこれでは意味がない。
照れ隠しに顔を背いて「バカじゃないの!?」と叫びそうになったがまだ屋敷の人間が寝ていると考え、徐々に声のトーンを落としていく。
後ろでグラハムが自分の顔を覗こうとしているのを感じ取り、剥がしたはずの毛布をグラハムの顔に向かって押し付ける。
「って、いうか!なんでグラハム君がここに居るわけ!?しかも同じ部屋に!」
他の迷惑にならないように声の音量を少し下げながら叫ぶクリストファーに、グラハムはぷはぁっ!と言うような感じで毛布から顔を出し、そして驚愕と悲しみの表情を張り付ける。
「な、んだ、と・・・?お前、昨日の事覚えていないのか?」
そうグラハムに言われ、昨日の事をもう一度考える。

―昨日は確か、リカルド達が外に出かけて屋敷にはグラハムと二人きりになって、それぞれ静かに暇を潰していて・・・

クリストファーが考えている中、グラハムは悲しみの所為か床に転がり落ち「悲しい!悲しい話だぁああああ!!!」と泣きわめいている。
そんなグラハムを無視しつつ、クリストファーは尚も考え続ける。

―そう、それからなんかグラハムが変な事を言いだしてそれで・・・

その後の事を鮮明に思い出してしまい―自分で毛布を被った。
「ん?どうしたクリストファー。」
転がりまわることを止めて再びクリストファーの方を見るが、返事がない。
「?・・・クリストファー?おーい。」
ベッドに乗り、毛布を被ったクリストファーの体を揺する。が、返事がない。
「なんだ?何かあったのか?!」
本当に心配そうに話しかけていると「ほっといてぇ!!」と若干声が震えた声が聞こえた。
そこでグラハムは気が付いた。
「あ!やっと昨日の、俺とお前の愛の誓いを思い出してくれたかぁ!!」
グラハムが嬉しそうに言うと素早く毛布の持ち方を変え、再びグラハムに被せる。
「むぐぐ!」
「そ、う、わっ!大声で言わないでぇえええ!!!」
言葉になっていない奇声を上げながらクリストファーは部屋を出て行った。
毛布を顔から引き剥がし、部屋に一人取り残されたグラハムは「可愛いなぁ。」と呟き、グラハムも少しして部屋を後にした。
 

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