BACCANO!

□嘘。(グラクリ)
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「グラハムぅ。」

ルッソ邸の一室のベッドに寝そべる赤目の青年―クリストファー・シャルドレードが同じベッドに腰掛けている青い作業着を来た青年―グラハム・スペクターに本を捲りながら話しかける。
「悲しい・・・悲しい話だ。」
だが、グラハムはそのクリストファーの態度が嫌だったのか、テンションの低い声で語り始める。
「お前・・・俺に用があって名前を呼んだのに、なんで声以外の意識が本に集中してんだよ・・・。俺に話しかけてくれるのは凄く嬉しい。だが・・・だが、どうせならこっちを見て話せ。これじゃあまるで、本>俺じゃないか・・・ッ、それって悲しいだろう?」
「・・・うん、僕は君の頭が悲しいと思うよ。どうして僕が話そうとしたのに君が話し出すのさ・・・」
「何!?俺が悲しいのは俺の頭が悲しいからなのか!?じゃあこれから俺は誰かに話し掛けられる度に悲しくなるってことか!?なんだそれ・・・悲しい・・・ッ、ハッ!また悲しいって言った!!くそっ!俺の頭はもう悲しいとしか感知しないのか!」
頭を抱えて「悲しい!悲しい!」と泣き叫んでいるグラハムに、クリストファーは可哀想なものを見る目でグラハムを見て、深いため息を吐く。
「はぁ・・・、しかも話噛み合ってないし・・・。」
そして、諦めたのか再び本に目線を落とし、ボソリと呟いた。
「僕、そう言うところ嫌いだなぁ・・・」
「・・・。え?赤目?ごめん聞き取れなかった。・・・もう一回言って・・・」
「・・・もう良いよ。」
「なっ!なんだよ!気になるじゃないか!」
「もう良いってば。」
「きーにーなーるー!!話せ赤目!」
体を揺らされ、本を読めなくなった事にさらに不機嫌になったクリストファーは本をバタンッ!!と閉めて、起き上がる。
「だから・・・ッ、グラハムのそう言うところが嫌いって言ってるの!!!!!」
「・・・。」
それを聞いて、体中に電気がピシィッ!と通ったように固まったグラハムは、次第にワナワナと泣きそうな顔を見せる。
「ぇ・・・?嘘だろ?あ、話聞かなかったのは謝る・・・だから、許せ・・・な?なぁ赤目?こっち見ろよ・・・目を合わせてくれよ・・・?なぁって・・・」
目に涙を溜めて、行き場の無い手を空中に漂わせるグラハムに、クリストファーは尚もグラハムから目を背けるように窓の外を見る。
「なぁ、マジでごめんって・・・だから機嫌直せよ?」
クリストファーの服に手を伸ばそうとするが、パシッと払い除けられる。
「ッ!!」
「触らないで。グラハムの事なんて嫌いだよ。絶交。」
「あ・・・、あぅ・・・」
とうとう涙を流し始め、体を震わせ始める。
そして、もう言葉だけでは無理と思ったのか、クリストファーにがばっと抱きついた。
「ッ!!?ちょっと、グラハム!」
「ごめん!謝る!何回も何十回も何百回も謝るから!だから俺を嫌わないでくれ!好きなんだ!お前以上に好きな奴なんていない!だからそのお前に嫌われたら俺はどうすれば良い!?なんでもする!自分の関節外せって言うなら外すし、解体やめろって言われたらやめる!服装変えろと言うのならばちゃんとした服も着る!だから・・・ッ、だから・・・!」
わぁわぁ泣き出したグラハムに、クリストファーは困ったように頭を掻き、ため息しながら苦笑すると、グラハムの頭をポンポンと撫で叩く。
「落ち着きなよ・・・。全く、グラハムってば単純だなぁ・・・」
いつも通りのクリストファーの優しい声に、グラハムはぐすぐすと鼻を鳴らしながらクリストファーの声に耳を傾ける。
「今日が何日かわかる?」
「え・・・、今日は確か・・・4月1日・・・」
「何の日かな?」
「何の日・・・?えーと・・・4月1日・・・4月1日・・・よい?良いの日?」
「ハハ・・・、違うよ。知らない?エイプリルフール。」
「・・・何だ?それ。」
「えッ、本当に知らないの!?・・・エイプリルフールって言うのは、その日の午前中だけ嘘を吐いても許される日なんだよ。」
「嘘・・・?・・・え!?じゃあ今さっきのは!?」
「嘘だよ、嘘。君を嫌う訳ないじゃない。」

抱きしめ返して「怒った?」と言うと、グラハムはより一層強く抱きしめ、首を横に振りながら「怒ってない。嘘で良かった・・・」と呟いた。

その後、二人はクリストファーが作った昼ご飯を食べた後、いつも通り充実した日常を送りました。
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