最強純情男に祝福を
□第6話
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「こ、こんにちは・・・・・・」
土曜日の昼過ぎ頃――
トムが事務所の窓から顔をのぞかせると、そこには片手に小さな紙を、もう片方に紙袋を持った一人の少女が立っていた。
「あ、あの・・・・・ここに、へいわじましずおさんはいらっしゃいますか・・・・・?」
いかにも緊張した様子で、頬を赤くしながら訊ねる少女。
そんな光景を見てトムは心の中で首を傾げた。
メイプルブラウンの髪に翡翠のような瞳、白い肌――どことなく日本人離れした容姿。
「美少女」という言葉が、パズルのピースのようにぴったりと当てはまる少女と静雄が接点を持つことがあっただろうか。
疑問に思いながらも、トムは少女に笑顔を向けた。
「今、静雄はコンビニ行ってる。ちょっと待ってたらすぐ帰ってくるぞ」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます!」
少女は愛想よく笑うと、アパートの入り口付近まで歩く。
そして立ち止まると、くるりと180度回れ右をし、ぴしっと直立した。
そのまま沈黙が流れる。
およそ30秒後、口を閉じていたトムが沈黙を破った。
「・・・・・・・・お嬢さん、」
「はい?」
「ロボットだったぞ」
ぴしっと決まっててさ。
そう付け加えると少女は顔を林檎のように真っ赤にし、口を金魚のようにパクパクと動かした。
そんな様子を見てトムは苦笑する。
「まあ、外で待つのもなんだし・・・中で待っとくか?」
少女――あああああは笑顔で「ありがとうございます!」と言うと、トムのいるであろう部屋へと向かった。