5つの宝島

□Last Love Song(フニ×ホンギ)
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知らなくてごめん。
気付けなくてごめん。
一人にしてごめん。
君の最期・・・・一緒にいれなくて・・・・ごめん。

Last Love Song


俺達の出逢いはまだ暑さが残る9月。
チキンの出前のバイトで君の家へ行った時の事だった。

「うわーっ、すげえマンション。こういう所緊張するんだよな・・・」
オートロックのタワーマンションの最上階が出前先。
デリバリーのバイトを始めたばかりの俺は緊張しながら部屋のボタンを押した。
『はい』
「あ、ト○オレチキンです」
『どうぞ』
自動ドアが開きエントランスの中へ。
でももう一つボタンを押さなきゃいけなくて・・・
もう一度部屋番号を押してエレベーターホールへの自動ドアを開けてもらい、やっとエレベーターの前にたどり着いた。
最上階のボタンを押すとぐんぐんとエレベーターが上昇して行く。

ガラス張りのエレベーター。
俺は自分の背後を振り返った。
どんどん小さくなって行く車や人。
気が付けばそろそろ最上階。
地上何メートルなんだろう?と首を傾げればエレベーターのドアが開いた。
降りる時にもう一度ガラスの向こうを見て思う。
俺達の居る地上は「底辺」だって。
ここは俺達の知りえない世界だ。

何だこの床!?フカフカの絨毯に足が取られて歩き辛ぇえっ!
長い廊下を歩きながら可笑しな事に気付く。
この階ドアが一つもないんだけど・・・・。
かなりの距離を歩いているのに今までドアを一つも見ていない。
あ、一つ。
無いなって思っていると唐突に一つ目のドアと遭遇。
そしてそこからかなりの距離を歩いてさっきのドアより少し立派なドアの前にたどり着いた。
『ピンポ〜ン』
うん、チャイムは至って普通の音なんだ・・・・。
慣れない空間でやっと慣れた物に出会いほっとする。
居心地が悪くて早く帰りたいなと思っていると目の前の重そうなドアが開いた。
中から顔を出したのは俺より少し上くらいの若い男だった。

「ト○オレチキンです。お待たせしました」
「中入って・・・・」
「えっ?」
「いいから」
腕を掴まれて中へ引き込まれた。
靴っ、靴脱がないとっ!
「靴っ・・・」
俺より少し背の高い男は振り向くと、
「靴、脱がなくていいんだよ」
俺を見下ろして微笑んだ。




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