リクエスト 2

□変らぬ約束 土方side
2ページ/6ページ

「十四郎!!十四郎!!!」

攘夷志士の1人に泊まっていた宿まで連れられそこで待っていると、姉の許婚である芹沢朱鷺が迎えに来てくれた。
土方の顔を見るなり、その小さな体を思い切り抱き締める。
たかだか一週間の間に芹沢は憔悴しきっていて、土方は胸が締め付けられる思いだった。
この男が姉を溺愛していた事は、身近にいた土方が1番よく知っている。
その姉は自分を庇って殺されてしまったのだ。
しかし、どうしてもそれを告げることができなかった。
それを告げると、芹沢に憎まれるかもしれない。土方は咄嗟にそう思ったのだ。
土方は芹沢の事が、本当に好きだった。
親のいない土方にとって、彼は父親であり兄なのだ。
周が亡くなって近しい身内のいなくなった土方にとって、芹沢にまで見捨てられるのは恐怖であった。
抱き締めてくれる芹沢は普段なら決して見せない涙を流し、ひたすらに土方の名前を呼ぶ。
土方もその芹沢の体を抱き締めて、ただ泣き続けた。





結局この後、土方は芹沢に引き取られることとなる。
身内を亡くした土方には数人遠縁がいたが、そのどれもが彼を引き取ることに難色を示すか、どう見ても残された遺産目当ての人間しかいなかったのだ。
(土方家は裕福な家で、両親が残した遺産もかなりあった)
そんな遠縁など、どこに引き取られたとしても土方の扱いなど目に見えている。
だから芹沢は周りの反対を押し切って、土方を引き取った。
土方は遠慮したが、芹沢が頑として聞かなかったのだ。
土方を引き取った後の芹沢は、まるで愛した周の代わりのように、いやそれ以上に土方を愛し可愛がった。
そうして時は流れ、完全に幕府は天人の傀儡となり、攘夷志士は次々に壊滅の憂き目に合い、
長きにわたる戦闘は終結を迎える。
廃刀令が施行され、土方の幼馴染みである近藤の道場も閉鎖の憂き目に合った。
その時だ。芹沢に叔父である松平片栗虎から、対テロリストの特別武装警察・真選組創設の話が回ってきたのは・・・。
芹沢は一も二もなく引き受けた。
そしてそこに、行き場のなくなった近藤の道場の人間を総て引き受けたのだ。
勿論それは土方のためである。
土方が近藤の事で心を痛めていたことを、知っていたのだ。
芹沢にとって周がいなくなった今、土方が総てだった。
彼を幸せにする事だけが、自分に課せられた使命だと思っている。
そうして、芹沢・近藤を局長に、新見・山南・土方を副長に添えた特別武装警察・真選組が誕生したのだ。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ