リクエスト 2
□愛と服従のキスを 金時side
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新宿歌舞伎町で『万里』と言えば知らぬ者がいないであろうと言われるNo1ホストクラブだ。
その店でNo1を取れば名実共にこの国最大の歓楽街新宿においてNo1ということになる。
その座に現在居座り続ける男の名は、坂田金時と言った。
クウォーターであるが故に持って生まれた完全なる金髪。スタイルも背もこの国の平均を大きく上回り、
小顔のために軽く8.5頭身はあるだろう。甘いマスクとテノールの声はどんな鉄の女でさえ堕としてしまうと
噂される、いまやカリスマとして崇められるホストだ。
その彼に常連である某新興企業の女社長は、その顔に妖艶な笑みを乗せて言い放った。
今度すごい客を連れてくるわ、と・・・。
金時は嬉しいよ、と言いながらも、ほとんど聞き流していた。
そんなことを言ってくる客はそれこそ山の様にいたが、そう前振りされて連れてきた客で金時がすごいと
認めた客などいはしなかった。
それでも、この業界はコネや人脈が物を言う。
どうせ何処かの社長か、ろくでもない政治家だろうとは思うが、顔と名を売っておくことに越したことはない。
この時は単にそう思っていただけだった。
だが、彼女が連れてきた客を目の当たりにして、金時は呆然と立ち尽くすことになる。
一目見て、周りから一切の音が消えた。彼以外はなにも見えなくなった。
それほどその男はとても綺麗で、金時の心臓を射抜いたのだ。
彼から目が離せない。
聞いてるの?金ちゃん!とヒステリックな声で名前を呼ばれるまで、本当に金時の中で時間が止まったのだ。
そして再度、彼の名を紹介してもらって、もう1度今度は本当に息が止まるかと思うほど吃驚した。
恐らくこの国にいる者ならほとんどが知っているだろう、IT企業の副社長。
急成長した影にはその人あり、と業界で言わしめた土方十四郎だと、彼女は紹介した。
マスコミになど表に出るのは社長の近藤勲だが、実際に会社の経営をこなし、一気に大企業に押し上げたのは
副社長の土方の力、だと言う事は業界では有名な話だ。
金時でさえ耳にしたことがあった、超有名人。
それがこの目の前にいる男だとは、俄かには信じられなかった。
まだ、駆け出しの俳優だ、と言われた方がしっくりいく。
それほどに彼は若く、何よりも美しかった。
金時はこの日を境に、この美しい男にのめり込んでいったのだ。