リクエスト 2

□愛と服従のキスを  epilogue
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どこからか、鳥のさえずりが聞こえる。自分の家の近所に鳥などいただろうか?
土方は浮かび上がる意識の中で、ふとそんな詮無きことを考えた。
朝の生まれたての陽の光が瞼を差し、まぶしい。
そう思って手で光を遮ろうとするのに、全くそれは動かなかった。
体がひどくだるい。指一本動かすのも億劫だ。
何処か身に覚えのあるその倦怠感に土方は、嗚呼、と思い出す。
いつも激しい発作を起こした後はこんな感じだった。
まるで泥の中に填まり込んで、身動き1つ取れないようなそんな感覚。
なら自分はまた発作を起こしたのだろうか?
ぼんやりとする頭でそんなことを考えながら、重い瞼を懸命に引き上げた。
途端に眼に飛び込む、見慣れない天井。そして見慣れた幼馴染みの顔。
その顔は今にも泣きそうに歪んでいた。
何故彼がここにいるのだろう?
混乱した頭を必死に動かした。
そしてやっと思い出す。
自分は今家から独立し、彼と仕事を興したのだ。
そういえば昨夜は重大な事があったような気がする。
考え込んでいると、近藤の泣き出さんばかりの大声にそれは中断させられた。

「トシ〜〜〜!よかったぁ・・・!!!ごめんな、一杯無理させたからこんなことになったんだ!!!
 俺のせいで、本とにごめん!!!」

泣き出さんばかりではなく、彼はすでに泣いていた。おいおいと泣き伏す近藤に土方は申し訳なさで一杯になる。
今回のことは体調管理を怠った自分のミスだ。
そう近藤に告げても彼は頑として譲らなかった。

「いや!先生は過労が原因だと仰っていた!あと少し処置が遅かったら危なかったって言われたんだぞ!!」

その時のことを思い出したのか、興奮し始めた近藤は一週間の入院と更に一週間の自宅療養を言い渡した。
土方の顔が途端に引き攣る。

「ちょ、近藤さん!無理だ!!そんなことしてたら今度のプロジェクトが・・・!!!」

起き上がりかける土方の体を、近藤はやんわりと押し戻す。
そして首を振った。

「だめだ。社長命令だ。もし出社してきても追い返すからな」
「う・・・」

こんな時ばかり社長と言う単語を振りかざす近藤に、土方は上目遣いに睨みつけるが近藤はただ微笑み返すばかりだ。
土方はムーっとむくれてしまう。

「大丈夫だ。お前が少しいないぐらいならどうにかなる。俺たちを信じろ」

そんな風に言われたら承知するしかない。土方は不精不精頷いた。
そしてようやく引っ掛かっていた事を思い出す。
昨夜のトラブル。
土方はそれでなくても悪い顔色を更に変えた。

「こ、近藤さん!システムエラーは・・・?あんた、ずっとここにいたのか?!」

今回のシステムエラーはかなり大がかりなもので、そんな社の一大事な時に社長が居なかったとなると社員への示しがつかない。
怒る土方を近藤は苦笑して宥めた。

「いや、一旦ここには来たんだが引き返したんだ。エラーの方もどうにかなったからさっき来たばかりだ。
 お前のことは彼が、」

看てくれるって言ったからさ
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