リクエスト 2

□姫の仰せのままに  R18
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その日、例の如く何の前触れもなく、その扉は開いた。
その音にその家の家主、ここ歌舞伎町で万事屋を営む坂田銀時は、溜息を吐く。
程なくして、己がいた仕事の事務所兼居間の扉が開いた。
そこには、やはりというか、もう恒例というか、江戸の守護神、武装警察真選組・鬼の副長土方十四郎の姿がある。
そのままずかずかと中に入り、ソファに腰を掛け、メシ、と当然の如く一言発した。
それに銀時はまたもや、これみよがしに大きな嘆息を落とす。
土方はそんな銀時に一瞥をくれる事もなく、完全に無視だ。

「多串くんさァ。ここはレストランじゃないんだけど?」
「んなこたぁ、わかってる」

にべもない土方の返答に、銀時はガクリと肩を落とした。
彼には何を言っても、無駄だ。未だかつて、自分が彼に勝てた例しはない。
もう銀時は諦めの境地で、台所へと姿を消した。
余り時間を掛けることは出来ない。遅くなると、彼の機嫌は急転直下で落ちていに違いない。

 何で、こんなことやってんだろ?

銀時はあの唯我独尊の男のために、フライパンを揺らしながら、もう何度目になるか分からない溜息を落とした。



坂田銀時と土方十四郎は、ぶっちゃけ恋人という間柄だ。
その始まりも銀時からしてみれば、散々たるものだった。
いつもの甘味屋。その軒先で久しぶりに当たりが出たパチンコのおかげで、懐が少々暖かなった銀時は、ここぞとばかりに団子を食べていたのだ。
そこに現れたのが、土方十四郎だった。
今まで何度も土方とは顔を突き合わせていたが、彼とは会うといつも小競り合いばかりだ。
土方は自分のことを、気に入っていないのだろう。
それが銀時の見解だ。
だからこの時わざわざ土方が、自分に話し掛けてくる真意が分からなかった。
土方は非番なのだろうか?いつものかっちりとした黒の隊服ではなく、着流しを身に纏っている。

「なに?」
「俺と付き合え」

付き合え?どこへ?と思ったが、やけに土方が真剣な、まるで訴えるような顔をしていたのでつい頷いてしまったのだ。今から考えると、これが全ての始まりだった。
すると土方は無理矢理自分を立たせて、いきなり歩き始めたのだ。
だ、団子!!といいながら、残り全てをとりあえず手に持つことに成功し、銀時は引き摺られるようにその場を後にした。
そしてその状態のまま、10数分。
辿り着いた先に、銀時は目を瞠った。
そのまま見事に固まって動かなくなった銀時は、強引に土方に目的地まで連行されてしまったのだ。


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