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□ある、夕暮れの事
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夕暮れの丘。
墓場の連なる、海を一望出来る丘に並んだ大きい陰と小さい陰。
小さい陰が口を開いて大きな影に問い掛ける
「のぅ、アンデルセン。貴様等13課は何故、生を誇る事無く死んでゆくのだ?」
幼女の美しい黒髪が、風に吹かれて羽根のように舞う。

「何をほざく。吸血鬼」
アンデルセンと呼ばれた、聖職者の格好をした長身の男は、横で膝を抱えている少女を横目で睨みつけた。

「今、聞いた通りだ。否、頭が硬いから理解できないのかな?神父様。」
目を細めてせせら笑う少女の目は、血のように赤黒く、宝石のように透き通っており美しい。

その瞳に魅せられながらも、アンデルセンはアーカードの問いに答える。
「我等人間は、主により生を受け造られた。神からすれば、我々は一滴の雫。我々からすれば、神は轟々と流れいずる大河。死んでこそ、地に堕ちてこそ、我らは神という大河と融合することが出来る。それこそ、貴様は理解できないのかな?アーカード。」

「下らん茶番劇だな。有りもしない、形すら存在しないものを崇めるとは…」
「何が、言いたい。」


笑いを押し殺し、吸血鬼は神父の目を真っ直ぐと見つめる。


「偶像崇拝」

そう、呟いた。
傲岸に、不遜に。
しかし、少し寂しそうな響きを持っていて。
幼い少女の背中がとても小さく感じたのは、気のせいだろうか。
「お前は…何なんだ…アーカード。」

「…………」
暫くの沈黙の後、アーカードは素っ気なくこう答えた。

「ああ、やはり貴様は、おつむが堅いのだな。次に私に会う頃までには、ブラム・ストーカーを読んでおくといい。」

「…っ!!待て!!」
手を伸ばした刹那、目の前に居た吸血鬼は一瞬にして、居なくなった。



「偶像崇拝…お前は、生前、どのようにして、生きてきたのだ…。」


丘に一人残ったアンデルセンは、ぽつりと、

独りでに、そう呟いた


20091019ちゃきぞー

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