LIAR

□#06
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「…なにしてんの。」

医務室の椅子に座っている紗良はポツリと呟いた。

椅子というのも、この医務室は板の間になっており仕事用の机に合わせキャスター付きの椅子があるのだ。他の設備としては、ベットが5床、薬棚と本棚がいくつか、冷蔵庫、エアコン、シャワー、トイレ付き。正直、ここで生活できるだけの設備が整っている。後から聞いた話だが、どうも松平が用意していたらしい訪れた天人の大工により設備を整えられた。あの宴会が終わり、寝て起きればできていたのだから驚きだ。その代わりに娘の事を教えろと言われたが彼の娘の護衛には久しくついていない。そして、医務室の掃除やら片付けやら荷物の搬入やらは先日山崎さんが手伝ってくれました。

「ポン」

「カン」

「おっ、リーチ」

「それロン」

麻雀卓を囲むむさ苦しい男3人。部屋についているエアコンのおかげで常に心地の良い気温になっていると判るやすぐに溜まる隊士が出始めたのだ。因みに全員医療班な訳で、紗良の部下という立ち位置なのだ。

「ここ、雀荘と違うねんけど?」

「いーじゃねーか。寒ィんだよ、外。」

「良いわけあるか。場所代払うなら考えてもいいけど。」

「金取んのかよ!」

「見てても面白くないし。なら、ね?」

手で金のマークを作りニコッと笑う。

「せめて混ぜろよなぁ。」

「え?紗良さん打てんの?」

「そりゃもちろん。麻雀囲碁将棋花札なんでもござれ〜」

「なら、やるか?」

「マジ?お手柔らかにー」




女子の方が意外とカエルとか触れたりする



「いきなりなんだけどよ、松南って局長の昔馴染みだって話マジ?あっそれポン。」

「マジマジ。アタシも一瞬武州で世話になってんのよ。」

いきなり真面目な顔になったので何かと思えばそんな事を聞いてきた。そういえばその辺説明してなかったかもしれない。

「リーチ、えっやっぱマジなんだあの噂。」

「噂?てかリーチ早ない?」

「そうそう、紗良サンが来たのはコネで実力は伴ってねえって。」

「マジ?アタシ割とできる子やのに…。」

「マジマジ。つーかそれ自分で言うか?」

「それよか、逆になんでお前らこんなにアタシのとこ来るん?」

「別に俺ら反対する理由無えし?」

「喋ってみりゃ意外と気さくだし?」

「この部屋居心地良いし?」

「なぜ全員疑問系…。それ、ポンね!」

「それに副長倒せるくらい強いなら文句のつけようねえって。」

「まあ?アタシめっちゃ強いし?」

「だから自分で言うか?」

「おっしゃ!カンか〜ら〜のおっ嶺上開花〜♪役牌対々嶺上ドラで満貫12000でーす!」

ガラガラと扉を開けたと同時にウソだろまたやられた!という叫びを上げた馬鹿を見て眉間に皺が寄るのが自分でわかった。どうしたものかと考えた時、隊士の1人と目があう。

「あ。」

やべ、とでも言いたげに声を出すとそれにつられ残りの隊士もこちらに顔をむけた。

「げ。」

紗良の顔も流石に引きつる。

「何やってんだ?」

「…麻雀?」

正直に答える。

「そうじゃねーだろ!何仕事サボってんだ!」

「サボり違うわ!えっと…息抜き?」

「息抜きで麻雀する奴があるか!」

「あるわ!つか、アタシだけに言うなや!」

「お前しかいねーだろ。」

「あり。いつ間に!」

周りを見ても誰もいない。逃げやがったな。

「あり。じゃねえ!!……えらく馴染んだじゃねーか。」

「あー。アイツらは少数派、反対派はまずここの部屋に来んし会ったら舌打ちされるで?んで、何の用?」

赴任後そこそこ数日で慣れてる奴らの方が稀有だ。

「…まあいい。コイツ、知ってるか。」

そこでポイと渡されたのは書類の束。内容を掻い摘むと春雨の船が襲撃され壊滅、攘夷志士の桂に関係があると推測、それに伴って攘夷志士に狙われる天人の護衛依頼。といったところだろう。

「禽夜か…早い話が天人至上主義の蛙。お前なんか、1番嫌いなタイプやと思うわ。」

「護衛したことあんのか?」

なるほど。紗良が護衛班にいたことを半ば利用するつもりらしい。

「あー、一応ね。碌な奴ちゃうで。」

「春雨との関係は?」

「……また余計なことを。大分黒に近いグレーやな。叩きたかったら完璧に証拠あげる事やね。」

「そうか、分かった。」

「アタシも行くの?コレ。」

ピンと紙の束を指で弾く。

「当たり前だろ。」

「そ。お前等ごときに護衛が務まると思えんからな、フォローしたるわ。」

「……。」

お前等ごときとはなんだ。とはいえ、土方からすると正直意外だった。てっきり「めんどくさいから行かない」ぐらい言うと思っていた。

「褒めてんのよ?自分等、曲がった事はできんやろ?」

「どう考えても馬鹿にしてんだろ!」

「違う違う。代わりに太鼓持ちぐらいやったるつってんの。」

少し笑いながら言う。これで馬鹿にしてないのなら何なのだ。

「それよりアタシ嬉しわ。」

「何がだ?」

「まさかアンタからこんなに早く頼られると思ってなかったから。」

わざと嫌味らしく言う紗良。

「勘違いすんじゃねーぞ、利用してやってるだけだ。なにも完全に信用した訳じゃねえ。」

「へいへい、わかってますよー。」

紗良はそう言い拗ねたように雀卓を片付け始めた。まあ仕事をこなすのならば文句は無いか、と思い土方は医務室を後にしたのだった。

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