書物宮
□岐路
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聖域から見える月を一人眺めていた
宮の柱に背中を預け、ズルズルと崩れると赤い筋が軌跡を辿る
「……アイ…」
言葉を言いきる前に体は横たわる、
震える手は血にまみれ、彼方を想わせるように月は輝いている
ゆっくりと目を閉じ、意識が遠くなるのを感じながら、その体を優しく抱き上げられる浮遊感の中で、眠りに落ちた
★★★★★★★★★★
処女宮の入口で男が叫んでいる、
「シャカ!シャカはいないのか!」
「…アイオリア…随分と慌てているようだが…」
金の髪をなびかせながらシャカがゆっくりと現れる、アイオリアは体がざわつくのを感じた
「ムゥが見当たらん、白羊宮にもジャミールにも居ない」
シャカは静かに微笑む
「…白羊宮の柱に…気付かれなかったか?」
明らかに不機嫌なシャカは、眉間にしわを寄せ呟く。
「…ムゥは…今…死地をさまよっている…私の手で尽くせることは全て施した」
アイオリアは膝を地面に付け俯く
「何故…そんなことに…」