50音

□通話ボタンを押す勇気
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「……ハァァァ…」





携帯を片手に大きなため息

携帯の持ち主、藤ヶ谷太輔は今ものすごく悩んでいた


悩み、それは―――……


今、携帯の通話ボタンを押していいのか

くだらないことだと感じる人は多いと思う

しかし、藤ヶ谷にとってはとても大切なことだった





「………」





しばらく携帯とにらめっこ

そして、また1つ小さなため息をついた


藤ヶ谷が今電話をかけようと思っている人物は1人の少女

その少女とは付き合っている

云わば、カレカノという関係だ


藤ヶ谷は初めて純粋な恋愛≠ニいうものをした

いつもは遊んで恋愛というものを楽しんでいた

いや、恋愛なんて気持ちさらっさらない

ただの遊びだった


でも、少女と出会ってから藤ヶ谷は初めて好き≠ニいう感情を持った





「………」





彼女と出会う前は普通に電話をかけられた

遊びで付き合っていた女子には簡単に


しかし、


いざ本当に好きな人にかけるとなると、緊張するものだ

藤ヶ谷は通話ボタンを押すか押さないかを、

約10分間、悩んでいた


そして、





「……よしっ…」





決意したのか

グッと手を握り、1つ深呼吸すると携帯を開いた

携帯の中から彼女の番号を見つける

そして少し落ち着いたあと、通話ボタンをポチッと押した


プルルルルっと電話の相手を呼び出す

2回コールがなる

3回目に突入……する途中、そのコール音は途切れた

そして電話の向こうから彼女の声が聞こえた





『もしもし?』

「あ、夢? 俺、太輔だけど……」

『ふふふ、知ってるよ』





可愛い笑い声

藤ヶ谷はその笑い声を聞くと、自然に口元が緩んだ




『……で、どうしたの? 何か用事でもあった?』

「あぁ、いや別に……ただ声が聞きたくなっただけ」

『ふふっ、なにそれ(笑) 明日も会うのに』

「ホント、なんだろうな(笑)」










ただ声が聞きたいだけで、こんなに悩むなんて……。

考えたこともなかった




END

 
 

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