50音

□悪夢を終焉へと導く手
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『………』





少女は今日も、地獄絵を見せられていた


黒板、机の悪戯書き

もちろん、学校に置いていった教科書やノートにも



死ね

消えろ

学校に来るな



などと、いつものように黒板や教科書にびっしり書かれていた

少女は涙をグッと堪える

そしていつものように持ってきていたタオルを濡らし、机を拭き始めた



クスクスと聞こえる笑い声

女子だけではない

今日は男子の声も聞こえた

少女は泣きそうになりながらも、涙を流さず頑張って机を拭いていた





















































数分後

ペンでびっしり机に書かれていた悪口は綺麗に消えた

ふぅ……と1つ深呼吸

すると、近くにいた女子数名が少女を囲むように集まった





『……な、なに…?』


「なに?じゃないわよ」

「いつもいつも何されても学校来やがって」

「ホント、あんたって邪魔なのよね」

「早く消えてくれない?」


『………』





目の前にしての悪口

これには心に響く

しかし少女はこれにも耐えた

グッと手を握り締め、涙を堪える


いじめが始まったのは学年が上がって、クラスに馴染め始めたころ

理由はわからないが、少女がターゲットにされていた

最初は陰口から始まる

そして少しずつそのいじめはエスカレートしていった


普段は机、教科書等への悪戯書き

体育時のときはジャージを隠されたり、

悪い時は椅子や机が教室から無くなっている時もあった

でも少女は全てに耐えてきた

涙1つ見せず、1人で頑張って戦ってきた



すると、



ガラッと勢いよく誰かの手によって教室の戸が開けられた

振り返ってみるとそこにいたのは、

女子に人気の少年

北山宏光だった





「おはよー!………ん?」

「「「あっ……」」」





少女の周りにいた女子たちが固まる

少年、北山が見た先

少女がその視線を辿ってたどり着いたところは、

消し忘れていた黒板


少女への悪口がびっしりと書かれていた黒板

その黒板を北山はじっと、睨むように見ていた





『……っ…』





少女は女子たちから離れ、急いで黒板の方に向かった

そして急いで黒板を消す


―――見られた…。



北山とは小学校の頃、よく一緒に遊んでいた

男子の中では1番と言ってもいいほど仲がよかった


そんな北山に見られた

少女は黒板を消し終えると黒板消しを置き、机に置いてあった鞄に手を伸ばす

そしてその鞄を肩にかけると、急いで教室から出ようとした





「おい、待て……」





聞き覚えのある声

今まで黙っていた北山がいつもより数段低い声で少女を止めた

そして、視線は少女から教室に向けられる





「さっきの黒板、どういうことなんだよ」





北山の声は怒りを抑えている声に聞こえた

その声を聞いたクラスメイトはビクッと怯えるような目で北山を見る




「おい、誰か説明しろよ!」




ガンッと近くにあった誰かの机を蹴る

だが、誰も口を開かない

北山の怖さに誰も言い出せなかった


北山は自分を落ち着かせるように、1つ深呼吸をした




「あぁ、もういいや……」




何かを諦めたように呟く

そして視線はまた廊下にいた少女に向けられる




「……天音、ちょっと来い」

『うわっ』





グイッと腕を引っ張られる

いきなりのことだったため、少しバランスを崩した

しかし北山はそんなことお構いなしに腕を引き、先を進む

少女はそんな北山の後を追いかけようと、腕を引っ張られながら歩いた



残されたクラスメイトは茫然と立ち竦んでいた
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