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□書道部のあの子
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彼女は、俺の名前を見て呟いた。



『…幸村 精市。……幸せな村、』








『…綺麗な名前。』


その隣に居た、彼女の友人らしき人物は「夕葉、また名前の感想?」と呆れ顔だ。


「絵を見なよ!!この幸村くんの描いた素晴らしき絵を!!」

『うん、…ただ、この人の名前みたいに、この人も幸せだったらいいなぁって…』


「…何言ってんの!!テニスは上手で、容姿も端麗。それに勉強も出来るんだよ??不幸なわけ無いでしょ。」

『そうだけど…、何だか、この絵は寂しそうだよ…。』

「そう、かなぁ…??」

『…あ、ごめん。私がそう思ったから、気にしないで!!!』







彼女が見ていたのは事務室前に飾られた俺の美術の作品だった。

ただの風景画なのだが、そんなに寂しそうだろうか…

ただ、このところ体調が良くない。
悪い、というよりも何となく違和感を感じていた。
その不安からだろうか、…そんな絵に見えるのだろうか…。




そう思いながら、「俺も幸せであってほしい」なんて…
見たことも無い人間のために、そんな呟きが出来る彼女はすごいと思った。

(友人は、テニスコートに居るのを見たことがあるから、おそらくファンクラブの一員だろう。)





このとき、俺は既に彼女に好意を抱いていた。

側に置きたいと思った。










精)「…で、マネージャーに出来たらいいなって思うんだ。」

蓮)「…俺に言われても、どうしようも無いのだが、」

精)「だよな、…でも誰だか分かる?夕葉って名前だったんだけど…。」

蓮)「さあ、俺はよく知らないな。」

精)「そう…。」







先輩達が引退した、2年生の夏の終わりごろの出来事だった。








部活で話してみた。

3年生の先輩マネージャーも引退したことだし、マネージャーが居てもいいんじゃないんだろうか?

募集を募れば、沢山の希望者が来るだろうが…
爪を気にしたり、すぐにばてるような女子では困る。



そこで、彼女の名前を出したところ…


ブ)「ああ、明日奈 夕葉だろい??知ってるぜぃ。」

と丸井が知っている様子を見せた。
聞いてみれば、小学校も一緒だったらしい。



ブ)「アイツは無理だな。書道部部長だから。」


比)「しかし、確か…文化部はまだ3年生は引退していないのでは?」

雅)「文化祭まで現役のはずじゃが、」

蓮)「いや、書道部は現在3年は居ない。2年1人と1年5人で活動している。」

ブ)「そうそう、最初夕葉1人でさぁ、アイツ1年の時から部長だぜぃ?
それに、今年は1年生入れるんだってはりきってさぁ、5人も入ったって俺に
すげぇ喜んで報告してきたからなぁ…。アイツ頑張ったからなぁ、良かったぜ。」



精)「丸井は相当仲がいいみたいだね。(段々腹が立ってきたよ。)」

ブ)「ああ、世話になったしな。今も同じクラスだぜ?」

雅)「まあ、世話好きそうじゃのぅ。」

弦)「書道は相当上手いぞ。」


精)「(仁王や真田まで仲がいいのか、…すごく腹が立つよ。)」


ブ)「小学校の時もさぁ、音読の宿題ってあるだろ?あれ、親のサイン要るんだよ。
だからさー、自分で書いたらバレるから、いっつも字が上手い夕葉に書かせてた。

ジ)「それ以前に真面目にやれよ、音読!!!」

ブ)「最近のも、親のサイン要るやつは大抵夕葉が書いてる。すげー便利だぜ。」

ジ)「親指立てんな。それ、ヤバイだろーが。」

GOODのサインを見せる丸井にジャッカルがすかさず突っ込んでいた。





弦)「しかし、幸村は何故、明日奈をマネージャーに?よく知らないではないか。」

ブ)「分かった、一目惚れだろ!!幸村くん!!」

弦)「なっ、そんな不純な動機でマネージャーとはたるんd…

精)「真田は黙れ。」






そっか、書道部部長か。
















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