四天宝寺
□大雨の七夕
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大雨が降る。
突風が吹く。
雷が落ちる。
今年の七夕はきっと織姫と彦星は会えないだろう。
天の川増水で避難警報や。絶対渡れへん。
まず、大雨やろ?
突風のせいで横殴りの雨になり、視界は悪い。
真っ白やけん、天の川の先なんか絶対見えへん。
そして雷や。織姫、こんな怖い中、外で待っとる訳無いやんか。
『(雷がありえへん!!ホンマ嫌やぁ!!)』
雷怖い、けど…そんなん、言えん!!
このメンバーは無理や。絶対笑われる。…もう一人は何考えてるか分からん。
そういえば、昨日、「明日は警報出るかもしれん。6時の時点で出とったら自宅待機や」と白石が言っとった気ぃする。
『…なあ、2人は何で来たん??今日、きっと警報出ててんで。』
謙)「ああ、部活やぁぁ!!って焦って、“浪花のスピードスターなめんなや!”って調子乗って走ってきたら皆居らんかってん。」
『それは、随分調子乗ったなぁ…。』
警報出てたのに部室に居る人1人目。忍足謙也。
謙)「しゃーないやん。焦っててん。」
『そっか…、…千歳くんは??』
千)「気まぐれたい。」
『気まぐれで来れるような雨の量じゃないと思うんやけど、』
謙也が走ってきたのにあんまし濡れてへんのも不思議やけどな。
(俺は雨も避けて走れんねん。by謙也)
やっぱり何考えとんのか分からん。
でもええわ。まだ雷のこと気にせんでもええ。
でも、さっきから空が明るいねん。
雨は降っとんのや。でも明るいねん。
お天気雨??なんて量とちゃうやんなー…
どう考えても、雷のせいやん…。
あーー!!雷のこと気にしてしもうた!!!
今横に稲妻走るの見えたぁぁ!!
ちゅーか、さっきから、段々近くなってる気ぃすんねん。
ピカッって光ってから、ゴロゴロって鳴るまでの時間が段々短縮されてんねん!!!
謙)「夕葉はどうして来たん?」
『…うちは、6時より前に出な間に合わんねん。』
謙)「そんなに家遠かったか?」
『いや、準備するん考えたらもっと早く来なアカンねん。』
謙也は初めて知ったと、驚いた表情をして「ありがとう」と言った。
照れくさかったので、『ヘタレはそんなん気にせんでええよ、』と言っておいた。
千歳くんは、明るい空を部室から見上げている。
千)「すごかー…綺麗たい。」
『(そんな感動できるもんちゃうで!!感電したら死ぬねんで!!)』
その時やった、
光のとほぼ同時に、ドンッと体を震わせるほどに大きな音がしたんは。
もう、思わず『キャァッ』って声が出とった。
『いやー…怖いー…無理ー…近く来んとってー…』
と耳押さえて小さくなっとった。もう、うち涙目や。
だって、あんな近くに落ちるとか怖すぎやんか!!
千)「もしかして、雷怖いとね?」
『…うん……うち、今なら七夕のお願い事雷止めてくださいにするわ。』
謙)「そんなつまらん願い事やめとき。」
『…あれ?謙也笑わへんの?』
謙)「お前、俺のこと何やと思うてんねん。」
『だって、謙也笑うと思うて我慢しててん。』
謙)「俺そんな酷い人間やない!!」
『せやなー…ヘタレやもん、そんなん言えへんよなぁ、』←
謙)「ヘタレちゃうで!!」
謙也と会話してる間も、千歳の事気になってしゃー無かった。
チラチラ千歳のほう見ててんけど、何か…考えてた。
やっぱ、分からへんなー…
そしたら、いきなりや。
ハッキリ言うて、雷よりも驚いた。
『千歳…??…どうしたん??』
何これ…、うち、今千歳にぎゅーってされてんねんで?理解不能やん。
千)「…こーしとったら、怖くなかと?」
『怖くないよ、…でも、何か…ちゃう意味で困るっちゅーか…ドキドキするっちゅーか…///』
アカン、今うちの顔真っ赤や!!りんごや!!
千)「駄目とね…、」
何、この子!!落胆した顔がメッサ子犬みたいで可愛えやんか!!
『…千歳、そんな事無いで!!おおきに!!怖くなくなったわ!!』
千歳は、目ぇ輝かせて「むぞらしか!!」と言いながら、抱きしめる力強うした。
千)「可愛いって意味たい。」
『…おおきに//…千歳もかっこええなぁ!!』
千)「俺、夕葉のこと好ぃとおよ。」
『………、…うちも、千歳のこと好きやで!!//…って思うたんは、ついさっきやけど…』
千)「今日は織姫と彦星会えんと思うたとよ。でも、願い事叶ったばい。」
『何お願いしたん??』
千)「“夕葉が俺んこつ好いてくれますよーに”って書いたとよ。」
昨日、明日は七夕や言うてテニス部のみんなで書いた短冊。
織姫と彦星、会えんでも、恋のお願いは叶えてくれるんかなー…??
『…うち、千歳やったら雷ん中でも外で待っとくわ。』
千)「俺も夕葉のためなら、川氾濫しとっても会いに行くばい。」
謙)「(この状況で俺、どないせーっちゅーねん!!///誰か来ーい!!俺、この世界に1人ぼっちやねん!!)」
警報が解除されて、全員が集まったのはそれから2時間後のこと。
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