四天宝寺

□それは一瞬の出来事。
1ページ/6ページ






それは一瞬の出来事やった―。



目を奪われる…。

いわゆる、一目惚れっちゅーヤツや。
…そう気づいたのはそれから数秒経った後。





俺は試合を終えた。

四天宝寺中、西日本大会の制覇に向けて、ダブルス2の試合を終えた時。

勝利を収めた俺は、「絶頂」と言ういつもの言葉を言ってテニスコートを去ろうとした。



握手を交わす。振り返る。


小春や、ユウジが「おめでとう!」「まずは一勝や!」と言ってるんにも気づかずに…


俺は、その女の子に目を奪われとった。








女の子は、涙を流していた。


「―……。」

そんな彼女に目を奪われて、…それが一目惚れだと気づいたときに謙也に名前を呼ばれた。



「やったな、白石!!……白石?どないしたん??」


「あー…何か、九州二翼に勝ったんやなぁ…って思ったら、何かボーッとしとった…。」


「せやなぁ、…やっぱ、強いやつらとの試合はおもろいわ!!」


「せやな。」






俺がテニスコートを出て、次の試合が始まると既にその女の子はどこかに行っていた。


周りを見渡して探す。



…走っている彼女を見つけた。


彼女は千歳に向かって、何かを大声で言っているように見えた。
スタンドの反対側やったから、気になる内容は聞けへんかったけど…





俺の目で見たら、その言葉を聴いた千歳も何か言うて、彼女も嬉しそうに笑っていた。








「(一瞬で恋に落ちて、その後すぐに失恋やん…。)」











「…で、この子誰?」


何故か、俺ら四天宝寺と妙に仲良く喋っとる小さい男の子が近くで試合を見ていた。

彼女が居ったんは、この子の隣やったような気もする。




俺は、気を紛らわすようにどうでもええ事を聞いてみた。


すると、その男の子本人が答える。




「ワイ、遠山金太郎言います。よろしゅう!!」



その時は、これからもよろしゅうすると思うてへんかった…。














そして、俺らは西日本大会制覇を果たした。



「(次は全国や…。このメンバーなら全国ベスト4…いや、優勝かて…)」



学校帰って、オサムちゃんからのご褒美に驚いた。


部室には、ドアよりも大きなこけしがあった。


「ちゅーか、これじゃ部室使えません。」


どうやって入れたんか知らんけど、オサムちゃんはとりあえず出しといてやー…と言っていた。


無理やろ。
まず、どうやって入れたんか教えて欲しいわ。







白石蔵ノ介、二年の夏の出来事やった…。







「(後々考えてみれば、あの女の子…金ちゃん(←既に仲良し)と一緒に居ったちゅーことは、小学生やんなぁ…。)」






俺って、ロリコンなんやろか…。







ちゃうちゃう、絶対ちゃうで!!
来年になったら中学生や。中3と中1やったら何の問題もあらへん!!



…とか考えて、


「(俺、諦め悪いなぁ…)」
って思うた。









「白石、百面相せんとこけし出すん手伝ってやー。












そして、季節はめぐり―。









次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ