LongStory

□関東大会編(幸村side)
2ページ/2ページ





眠れないはずの夜は、わりとすぐに過ぎていった。


理由は簡単だ。


いつの間にか眠ってしまったから。








夕葉は本当に素直で、

表情がすぐ変わって、

下ネタ言うと絶対怒って、


俺が怖いクセに、その時は
思いっきり言葉をはなって、



そんな君が愛しいと、






夕葉を思うと、安心していく。






いつの間にか手紙を持ったまま、眠っていた。















朝、目が覚めて、家族が心配していた。







母さんが、「待ってるって。夕葉ちゃんが。」と笑顔を見せた。


精)「うん、…知ってるよ。もう何度も聞いた。」














精)「俺、大丈夫なんだ。手術は成功する。」


「どうしたの…??」



精)「間違いないよ。またテニスコートに立つんだ。」



























俺は、手術準備の直前まで、夕葉からの手紙をお守りのように握っていた。
























手術直前、みんなが駆けつけてくれた。
そこに、夕葉の姿は無かった。






精)「みんな…」


ジ)「今、真田が戦ってる。」

蓮)「精市、弦一郎も頑張ってる。頑張れよ。」

比)「待ってますからね。」

ブ)「早く一緒にテニスしようぜぃ、」


精)「赤也、何でそんな顔してるんだ?俺は大丈夫だよ。」

赤)「…いや、夕葉先輩連れて来れなくて、すんません。」

精)「知ってるよ、…大丈夫。」


…ただ、落胆している自分も居るけど。





雅)「…帰ってきたら、笑顔、見せちゃりんしゃい。」

精)「ああ、ありがとう。じゃあ、」




でも、何となく分かるんだ。

夕葉が自分の使命を果たそうとしてくれるのも分かる。

そして、まだ自分を責めてる夕葉の気持ちも分かる。





でも、多分ね…俺の憶測だけど、一番の理由は、俺に甘えさせないためじゃないかな?



俺が手術で戦って、もう一度、夕葉の顔を見れるように。

あんな手紙で終われる訳無いって俺に問いかけるように。


だから、手術直前に会わなかったんだ。




















精)「夕葉…。」







俺の手術は、その言葉を思うことで始まった。

そして、目が覚めたときも、目の前に居た君にそう呟くんだ…


そう思いながら、麻酔に身をゆだねた。




























目が覚めたら、…テニスコートに一歩近づける。





目が覚めたら、あの場所へ…みんなが居る、君が居る、あの場所へ…。

















目を瞑ったときに、見えたのは、君の笑顔。

「待ってた」と微笑むメンバーの姿。





そして、いつもどおり肩にジャージをかけた俺だった。







前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ