LongStory

□関東大会編(幸村side)
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精)「……夕葉、…まだ居たんだ。」


『うん、…だって、明日、手術だから。』





精)「うん、……ありがと。」







目を覚ますと、夕葉は俺の手を握っていた。


最近、全然上手く喋れない俺なのに、君は微笑みかけてくれていた。






俺は、震えていないだろうか。



自分で言ったのに、



「このままの体じゃあ、どちらにしろ、俺はテニスは出来ない」


そう言ったのは俺だったのに、







俺は、正直怖かった。







確実に震えている。
何も考えたくなかったが、感じていた。



それでも、夕葉は『怖いの?大丈夫?』なんて言わなかった。








『待ってるよ、』



精)「うん…。」








『…明日、会えないかもしれないけど、』


精)「………、」




『もし間に合わなくても、他のみんなには来てもらうから。
私は、絶対に最後まで立海の試合を見続けるから、…そして
勝って、ちゃんと私が幸村くんにメダル持って帰るからね。』












『そしたら、最高の笑顔、見せてよ。』






精)「うん…、分かってる。」










分かってるよ、…そしたら君は俺の前から消えるんだって事も。










でも、それでも待っている。




俺は待ってるよ。







夕葉は、「明日が早いから」という理由と、夜道を一人で歩くのは危険という理由で早めに帰った。


…といいながらも、病院に居れるだけ居てくれたのだが。










手紙に気づいたのは、夕葉が帰ってからのこと。








【幸村くんへ

 私には、上手な言葉が見つかりません。

 前に、「頑張れ」じゃないと言ったくせ
 に私は「頑張れ」という言葉を不意に誰
 かに使うことがあります。

 でも、幸村くんにはその言葉は違うと思
 う。「待ってる」しか言えないんだ。
 その「待ってる」にあたって一つ。
 私が待っているのは、「幸村くん」であ
 って、「テニス部部長」じゃないって事
 を知っておいてほしいと思います。
 つまり、無理はしないで欲しいってこと
 です。
 
 私は手紙を書きながら震えています。
 (だから字が少し汚いのは許してね。)

 もし、立海が勝ったら私はこの世界から
 消えるのかな…?そう思うと、立海が勝
 つことを素直に望めない自分。そして、
 帰れるのだとしたら、私が勝てるように
 運命を変えてしまいたいと思ってる自分
 が居ること。そんな自分が許せないのも
 事実です。ずっと幸村くんには言わない
 でいようと思ったけど、何故か幸村くん
 には隠し事をしているのが辛くて、でも
 弱い私は直接言うのは怖くて手紙を書き
 ました。

 私は知ってるよ。幸村くんの手術は成功
 する。そして幸村くんはもう一度コート
 に立つ。だから信じて。


 それじゃあ、また明日会いに来るね。
 きっと、幸村くんは麻酔で眠ってると思
 うけど、目が覚めるまで待ってるから。


            明日奈 夕葉】












欲しい言葉をくれる、とはっきり分かる訳では無い。

でも、俺が求めていた言葉の気がする。


「大丈夫」なんて気休めじゃない、


不器用ながら、自分の気持ちを素直に伝えてくれる。


そんな夕葉が愛しい。





会いたい…。










会ったら、この不安は全て消えるような気がして…。










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