黄昏の話
□最果ての夜
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太陽が沈んだ海は穏やかな闇をたたえて揺れていた。
水平線だけがぼんやりと金色に光り、残りは海の深い藍と黒水の空、そこに沈んだ銀の星と地面に流れた白い砂のみ。
そんな殺風景な砂浜に、僕とアンナは佇んでいた。
波の音しか聞こえない。
静かだ…
彼女の目は、ただ真っ直ぐに水平線を見つめていた。覚悟を決めたのであろう。
僕と彼女の間には、目に見えない深い深い溝ができていた。
〈なんとかして、向こう側に渡らなければ〉
しかし卑怯者の僕には、とても決められなかった。
永遠の時間を生ていく覚悟なんて…
「私のことは気にしなくていいのよ。死にたいのなら、死になさい。」
彼女のソプラノが僕の心を縛っていた鎖を解いた。皮肉にも心がすぅっと軽くなっていった。
それは残酷な言葉であったが、終わりを与えてくれる至高の言葉でもあった。
----でも。