稲妻 短

□相対的プラトニック
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あの日から一週間たった。
彼女は変わらずに皆に愛想をふりまく
変わったことは
彼女が俺に必要以上に関わらなくなったことだ。
嫌われたのか、
俺にきをつかっているのか
どっちにしろ
「俺が招いた結果か」


あの日から一週間たった。
霧野くんには極力関わらないようにきをつけた
彼に気を使ったのもあるけど
わたしが耐えられなそうだったから。
それもこれも
「わたしが悪いんだよなぁ」

目で追うことはやめてなくて
たまに目がぱちりとあってしまうと誤魔化すように笑って背を向ける
前は目があったことをたてに話しかけに行ったな
って


制服に着替えて部室をでると
霧野くんとめがあった
生憎の雨に感謝しながら傘を下げて目線を隠すと
「名無」
彼が
「倉庫に忘れ物しちゃったんだ」
私に
「かぎ開けてくんない?」
初めて話しかけてきた
「あ、うん。いいよ」
傘をさしてない彼の髪はぽたりと雫を落として艶っぽく光る
お節介なのかなぁって思いながら傘を彼の方に傾けて倉庫まで無言で私達は並んで歩いた
倉庫を開けると彼は携帯電話を掴んで
「さんきゅー」
ていつものように真顔で返してきた
嬉しい、じわじわしたものがこみ上げてきて私の口角も自然に上がった。
「ううん。見つかってよかったね」
まだ好き。
なにをいわれても
なにをされても、好きなまんま

「ごめんね」
こんなにすんなり言葉がでてきたのは初めてかもしれない
「今までいっぱい迷惑かけてごめん」
霧野くんは驚いたような顔をしてから言った
「迷惑だなんて思ったことないよ」
「え?」
「この間イライラしてて当たっちまったんだ」
ごめん
霧野くんが私に謝ることなんてなんもないはずなのに
今日の私は妙に素直で
いわなきゃ
ふっきれなきゃ
「ちがうの、わたし霧野くんのことが、」
「だまって」
彼は私の手を思い切りひいて頭を固定して耳元で囁いた
「そういうところ、先回りしないで」
ぐっと
唇が重なった。
深くて苦しくて幸せで、よくわからない。
「は、ぁっ...」
彼は私の口からこぼれ落ちた唾液を指ですくって
はじめて笑った。
私の前で
はじめて笑った。

「好きだよ」


相対的プラトニック


(そっちは素直で)
(こっちはひねくれすぎていたようだ)
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