霧野 長

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あの日から一週間
学校での噂は落ち着いてきた。
部活では、マネージャーや部員が乱用するようになったが。

部活が終わって、みんながわらわらと廊下を通っていた時
「名前!」
すれちがいざまに呼び止められた
「蘭丸君」
彼はあんまり私を
というか女の子を呼び止めない
「氷、作ってくれない?」
「怪我?」
「ああ、昔やったとろがね」
とん、と私の正面に座った彼を眺めながら私は氷の入った袋を強く吸った。
ぺったんこにはまだ、うまくはできない
「なおんないの..?」
袋から口を離して遠慮がちに話しかける
「ああ、治るよ。多分ね」
ラップと氷を手渡してから、椅子を彼の目の前にもってくる
さんきゅ、
と小さく呟いたその声がすてき。
椅子のうえに足をのっけて氷を押し当ててラップを巻き始める彼の手をみる
ずり落ちる氷を支えてあげるともう一度こんどは
ありがとう
とかえってきた
悪くない。この距離も。


効果絶大


この日から、部活後のアイシングは私たちの日課になった。

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