星河一天
□第ニ訓
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夜兎。
宇宙一名の知れた戦闘民族も大戦で数を減らし、今や“絶滅危惧種”と評される機会も多くなってきた。
すると自然とその個体価値もあがる。
その中で近頃は夜兎の子供ばかりを集めるコレクターがいるという噂をよく耳にする。
「ねぇねぇ、とーさんとーさん。」
「ん?」
父は白米を口にかき入れながら息子を見る。
「ボクはいつかとーさんより、ずーっとつよくなるんだ。」
「お?なんだ?お前、四つになってから急に頼もしくなったな。」
神晃は、神威の小さな頭を大きな手でワシワシと撫でた。
神威はニシシッと笑うと、母親に空になった茶碗を差し出した。
「かーさんおかわりっっ!」
その無邪気な笑顔に、江華はクスクスと笑いながら茶碗を受け取る。
「神威は男の子だもの、それにお兄ちゃんになったものね。強く逞しく、立派になるのよね?」
こんもりとよそわれた白米が目の前にくると、神威は勢いよくそれにがっついた。
「フフ、そんなに急いで食べなくても誰も取りやしないよ。」
「いーっぱいたべて、はやくおおきくなって、すっごくつよくなるんだ。
あ、そうだ。あとでみてよ!ボクずっとエイッ、ヤーってしてたんだ。」
「ククッ。よーし、見てやる。
まぁお前が俺に勝とうなんざ100年早いがな。」
「ギャアアアァァァ」
「おい!しっかりしろ!」
断末魔の中に佇む血塗れの小さな悪魔に、男達の足が竦む。
体を伝う体液は、子供の真下に真紅の水溜りを作る。
手についた血をペロリと舐めとる姿に幼児の面影はない。
『がァ…あああ、ああ、アアアアアア!!!!』
小さな体から発せられた言葉にならない雄叫びが、押し迫る廃墟の壁に反射する。
細い路地に響き渡る幼児独特の甲高い奇声が鳴り止むことは、男達の命の終わりを告げる。
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