星河一天

□第ニ訓
4ページ/9ページ










夜兎。


宇宙一名の知れた戦闘民族も大戦で数を減らし、今や“絶滅危惧種”と評される機会も多くなってきた。



すると自然とその個体価値もあがる。

その中で近頃は夜兎の子供ばかりを集めるコレクターがいるという噂をよく耳にする。






「ねぇねぇ、とーさんとーさん。」


「ん?」



父は白米を口にかき入れながら息子を見る。



「ボクはいつかとーさんより、ずーっとつよくなるんだ。」


「お?なんだ?お前、四つになってから急に頼もしくなったな。」



神晃は、神威の小さな頭を大きな手でワシワシと撫でた。


神威はニシシッと笑うと、母親に空になった茶碗を差し出した。





「かーさんおかわりっっ!」



その無邪気な笑顔に、江華はクスクスと笑いながら茶碗を受け取る。



「神威は男の子だもの、それにお兄ちゃんになったものね。強く逞しく、立派になるのよね?」



こんもりとよそわれた白米が目の前にくると、神威は勢いよくそれにがっついた。



「フフ、そんなに急いで食べなくても誰も取りやしないよ。」



「いーっぱいたべて、はやくおおきくなって、すっごくつよくなるんだ。
あ、そうだ。あとでみてよ!ボクずっとエイッ、ヤーってしてたんだ。」


「ククッ。よーし、見てやる。
まぁお前が俺に勝とうなんざ100年早いがな。」












「ギャアアアァァァ」

「おい!しっかりしろ!」


断末魔の中に佇む血塗れの小さな悪魔に、男達の足が竦む。

体を伝う体液は、子供の真下に真紅の水溜りを作る。


手についた血をペロリと舐めとる姿に幼児の面影はない。



『がァ…あああ、ああ、アアアアアア!!!!』


小さな体から発せられた言葉にならない雄叫びが、押し迫る廃墟の壁に反射する。



細い路地に響き渡る幼児独特の甲高い奇声が鳴り止むことは、男達の命の終わりを告げる。








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ