星河一天
□第七訓
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数日後。
母艦の食堂にて。
阿伏兎はテーブルに何も置かれていない席に座り、肘をつきながら小指で鼻をほじっていた。
すると、料理が沢山乗ったプレートを持った同僚の郭嘉(かくか)が声をかけてきた。
「よォ阿伏兎、小姓ついたってホントかよ。良かったな、前から忙しい忙しい言ってたもんな。
で、その小姓は…」
「……飯取りに行かせてる。」
少し疲労が写る瞳を向けた先では、
「こンのクソガキ!!いま俺の唐揚げ盗み食いしやがった!!!」
『……….………….…。』
「てめーどこの師団の備品だ!」
『……….…?』
山盛りカレーがふたつ乗ったプレートを持ちながら、見知らぬ天人をジッと見つめる紫音。
モゴモゴと口を動かす子供に、天人の額に怒りの筋が浮かび上がる。
と、その時。
『あだっ!』
バコンと紫音の頭に拳が降ってきた。
「お前ェのその手グセの悪さはどーにかなんねーのか。」
紫音はぷっくりと出来たたんこぶを抑えながら少し涙目で背後の阿伏兎を見上げた。
阿伏兎は紫音からプレートを取り上げると、紫音に手を上げようとしていた天人をジロリと見下した。
「紫音、どうせ取るならひとつじゃなくて相手をぶっ飛ばしてから全部取れ。ほら皿をよく見てみろ、まだ五つも残ってんだろ。」
『阿伏兎、ビヒンってなに。』
「あ?ビヒン?あ〜〜そりゃ沖縄の神バンドだ。」
「いやそれBEGINッ!!おかしいから、どこの師団のBEGINって意味わかんないよ。」
「まぁ細けェことは気にすんな。
ほら紫音、早く座れ。さっさと食わねーと飯が冷めちまうからな。」
阿伏兎の冷徹な瞳に振り上げていた手を下げた天人。
阿伏兎は紫音の背を押し、元いた席へ戻った。
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