星河一天
□第七訓
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翌日、阿伏兎の部屋の前へ来た紫音はぎこちなくパネルに暗証番号を打ち込んだ。
プシュッとドアが開くと、ほっと安心して室内へと入る。
「ぎゃあッ!なによ、この子供!?」
突然した阿伏兎ではない甲高い女の声に、紫音はビクッと肩を上げた。
目を見開く女の向こうから、阿伏兎が顔を出す。
紫音は持っていた資料の束をピラリと掲げた。
次回の、一番隊定例会議で使う資料を資料室から探してくるように言われていたのだ。
「…お、見つけてきたか。」
『仕事じゃなかったの。』
紫音は女をチラリと見ながら、阿伏兎に資料を渡した。
「うるせーな。ほら、もう行け。」
シッシッと追い払われていると、女がポケットから何かを取り出し紫音に差し出した。
「叫んじゃって、ごめんなさいね。阿伏兎さんにこ〜んなちいさな部下がいたなんて。
ご苦労様。コレ、よかったら食べて。」
それは、可愛い包装紙に包まれたひとつの飴玉だった。
紫音は頷くと受け取り、包装紙を取ると何の疑いもなく飴玉を口へ放り込んだ。
そして、そのまま部屋を出ようとした時。
紫音はバタリとその場に倒れた。
「紫音ッ!?」
阿伏兎は慌てて紫音を抱き起こす。
すると紫音は白目を剥きながら、ぐおおぉぉ〜〜と寝息を立てていた。
「ぇえ!?」
阿伏兎は冷や汗を垂らしながら女を見た。
「………ヤキモチ、焼いちゃった。テヘ。」
「……….…ハァ。郭嘉…効き目恐るべしだぜ、愛染香……。」
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