星河一天
□第十二訓
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第十二訓
「ピンチとチャンスは突然やってくる。」
食堂にて。
食事はじゃんけんで負けた阿伏兎が取りに行ってくれているので、紫音は元譲と座席を確保して待機していた。
『あれ?……』
紫音たちの前にテーブルを使っていた者がおいていったのか、卓上に新聞が一部放置されていた。
この新聞は「春雨通信」といって組織内での主な出来事やお役立ちコラムやサークル活動募集やら、そんな感じのやつが載っている月間新聞である。
紫音が目を奪われたのは、その一面を飾る今月のトップニュース。
『派閥争いに終止符……第四師団団長敗れる……….…』
そんな文字と共に掲載されていたのは、以前に阿伏兎の部屋で見たことのある女の顔写真だった。
『………コイツって……….』
舐めて、ものの数秒で意識がぶっ飛ぶ強烈睡眠薬入り飴をくれた、あの女だ。
みるみる紫音の顔が青ざめる。
「あ〜〜第四師団のな。この女、トンズラする時に春雨(組織)の金ガッポリくすねてったらしいぜ。」
「へえ〜〜そいつァ物騒な話だな。綺麗な顔してやるこたァ極悪人だ。」
元譲の言葉を遮るように言った阿伏兎は、大量の料理がのったトレイを新聞の上に置いた。
『阿伏兎….…』
「あ〜〜、今日の唐揚げは一段と美味そうだ。」
『コイツって……』
「あ〜〜、非番だったらビールとキュッといけんのになぁ。」
『お前の……』
「あ〜〜、よりにもよって午後から仕事たァついてねーなぁ。」
『……….………….…。』
じっとりと紫音が睨み付けると、阿伏兎はまるでゴミでも見るかのような目で見下してきた。
(余計な事は話すな。分かったな?)
と、彼の顔に書いてある。
ついでに効果音をつけるならゴゴゴゴゴゴゴゴ…だ。
「何だ?お前ら。」
元譲が首をかしげると、阿伏兎は「何も。」と返した。
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