星河一天

□第ニ訓
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第ニ訓

「ひとくち30回噛むのが理想的」






とある男は、路肩にあった屋台で買ったイカ焼きを頬張りながら、町人たちの噂話に耳を傾けていた。






「なんでもあの餓鬼ァ、とんでもねぇらしいぞ。」




「とんでもねぇって何がだよ?」




「人肉を喰らうっつー噂だ。」




「人肉!?」




「奴はあの幼さで大の大人を一瞬で仕留めちまうらしい、それも素手だけで。」




「その屍を漁ってよ、こっちに気付いて振り返ったら口元に血がべっとり。」




「ひィィ、おっかねぇ。」




「しかし、素手だけで殺っちまうたァ……よぉ、奴はあの傭兵三大部族のガキなんじゃねーのか?」


「単騎だと、荼吉尼か夜兎か………?」


「荼吉尼は、世にも恐ろしい鬼の風貌をしていると聞いたことがあるぞ。」


「………だったら、夜兎か?」


「マジかよ!夜兎と言やァ、売ると数年は遊んで暮らせるって聞いたことあんぞ!」




「いっちょ捕まえに行くか?」




「やめとけ、やめとけ!ありゃガキでもやべえって。」





町人たちがケラケラと笑い声を上げる中、男は険しい顔をしてその場を立ち去った。








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