星河一天
□第ニ訓
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「ねぇねぇ、とーさん、こんどかえってくるのはいつなの?」
神威は、玄関の扉を開いた父の背中に言った。
神晃は少しだけ首を後ろに捻る。
「今回の仕事はすぐに済む。」
「ふぅん。じゃあそれまで、またレンシューしとくよ。つぎはかつからね。」
「あぁ…分かった。母さんのことを頼んだぞ。」
「うんっ、任せて!かーさんはボクがまもるよ!」
いつもより強く降る雨の中を行く、神晃の足取りは重かった。
あの市場での件で、不幸中の幸いだったのは、ネズミの顔を神威が見ていなかったことだ。
布の間から見えた顔は、ドス黒い殺意に蝕まれたものだった。
アレを見ていれば、神威にも何らかの“刺激”になってしまっていたかもしれない。
息子の実力はメキメキと成長し、留まることを知らない。
「……….…ん?」
ターミナルの入り口付近で、神晃は知った顔を見つけた。
それは数人の男達。
小汚い格好をした彼等は、ぞろぞろと列をなしてターミナルへと入っていった。
「ありゃあ確かこないだ市場で猟銃ぶっ放してた……ようやく餓鬼殺しを諦めたか。」
金糸の柔らかそうな髪に、琥珀色をした眼球。
とても記憶に残りやすい。
それに加え、その幼児の正体は恐らく…いや、確実に夜兎だ。
その実力を目の当たりにした神晃は確信していた。
「こりゃあと十年後には、俺世代の時代も終わりか…」
ポツリと呟いた神晃は、傘の雨粒を払ってターミナルへと入っていった。
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