星河一天
□第四訓
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お互いに弱音をこぼしては励まし合い、薬物に蝕まれる体に鞭打ちながら、途絶えることのない敵と闘い続けた。
紫音の兄貴宣言をしてから、遊庵はよく紫音の頭を撫でるようになった。
ゴツゴツとした痩せ細った指で、紫音の少なくなった髪に手櫛を入れる。
とても安心する時間だ。
紫音はこの時間がとても好きだった。
『マエに、カゾクがホシィっていったけど……』
「うん?」
『……….…いまは“イマ”があれば、いいかなっておもうんだ。』
「今?」
『うん。』
「何で?」
『なんとなく。』
「…ふぅ〜ん?」
〔頭を撫でて貰えて嬉しいから〕とは、照れ臭くて言えない。
ただ、この“今の時間”が大切だということは伝えておきたかった。
遊庵は最近、よく壁に背を預けるようになってきた。
紫音がこの檻に来てから、もう少しで二年が経とうとしていた。
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