星河一天

□第五訓
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目の前が霞み始めた紫音を見て優しく微笑む。



「……ククッ、急に泣き虫になったな。いつものふてくされたツラはどこへ行った?」





遊庵とこの数日、出会ってからの出来事を話しては泣いていた。

そのせいで少し赤くはれた瞳は弱り、更に涙を促す。




「ほら、頑張って堪えねーと泣いてンのが観客(奴ら)にバレるぞ?」




『……ぜんぶ、くれたのは、おまえだろ……….…』





「紫音、笑え。」





『………ぜんぶ.…遊庵がいてくれたおかげなんだ。』





「いや、別に泣いたっていい。生きろ。俺の分まで。生きろ。生き方はどうだっていい、生きろ、生きてくれ。」






『……….遊庵、』





「解放だと言ったが、俺ァお前には生きていて欲しいよ。」






紫音の瞳から一粒涙が零れたのを見て、遊庵は溜息を吐くと襟足を数回撫でた。


そして紫音に歩み寄ると、体を引き寄せ、小さな体を優しく包み込むように抱きしめた。





「やっとお前を……….…お前は俺の光だ。紫音、本当にありがとう。未練はない、もういくよ。」












遊庵は腕を解くと、大きく後ろへ飛び退いた。

目を見開いた紫音は咄嗟に手を伸ばした。


『遊庵ッ!!やめろォォオ!!!!』







紫音が叫ぶのと同時に、遊庵の右腕が左胸に突き刺さった。









薄く歯を見せながら、幸せそうな面持ちで遊庵は逝った。











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