星河一天
□第十四訓
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第十四訓
「しがらみ」
「っ、ぃ、オイいい加減起きろ!このクソガキィィ!」
『ァァだだだだだだ!!』
髪を容赦なく引っ張られ、紫音は目を覚ました。
『ちぎれる!抜ける!ハゲるゥゥゥ!!』
涙目で睨みつけるとようやく解放してもらえた。
「ったく、どんだけ大声で怒鳴りゃあ聞こえんだ。テメェの耳は飾りか!?」
ゴミ溜めと化した部屋に阿伏兎が立っていた。
紫音は頭をさすりながら眠気眼で阿伏兎を見上げる。
『...あれ?阿伏兎、もう朝?』
「もう朝?じゃねーよ!また遅くまでゲームしてたんだろ!」
阿伏兎は床に散乱しているゲーム機や攻略本を足で蹴り飛ばした。
「部屋を片付けろとついこの間言ったばかりだろう。なのに、なんなんだこの廃部屋は。足の踏み場もねーじゃねーか。」
『...うるせェ父ちゃんだな。何の用だ、今日は仕事じゃねーだろ?』
紫音は寝床であるソファから起き上がると、側にある小さな冷蔵庫からコーラを取り出した。
三分の一ほど一気飲みすれば、喉がシュワシュワと音を立てる。
「だれが父ちゃんだ、張っ倒すぞ。コーラばっか飲んでんじゃねーだろうな?お前ちゃんと飯食ってんのか?最後に食ったのはいつだ?」
『......母ちゃんの間違いだった。』
着替えの最後に靴下を履くと、ひょっこりと顔を出している親指に気が付いた。
『ありゃ、新しいの買わねーと。』
「なんつー趣味の悪い靴下履いてやがんだテメェは。」
紫音の今日の靴下はレインボーカラーをしていた。
特にこだわりはなく、履けたらいいとしか思っていない様子。
「いいか、紫音。靴下は白だ。」
『なんで?』
「なんでって、そりゃあ白は清潔感があるからだ。潰れたトマトみたいな面の奴も、ハゲ散らかした奴でも、どんなに心が腐ってる奴でも、靴下が真っ白だったら全てをチャラに出来るんだ。」
『チャラ?』
「ガキにゃまだ分からんだろうがな。とりあえず靴下は白だ。白以外は履くんじゃねーぞ?いいな。」
何故かキメ顔でそう言った阿伏兎に紫音は首を傾げ、二人は食堂へ向かった。
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