皓月千里
□第五訓
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強さを極めれば、あらゆる物事を肯定出来るようになるのだと思っていた。
何物にも囚われず、俺を止められる奴なんて、この広い銀河を探してもいやしない。
けれど実際は違い、力を得る度に邪念が増えていく。
自分でも制御できないほど、特定のものに固執していく。
脳裏を過る金糸の髪。
「どうしてお前は離させてくれない。どうして掴みたくなる。どうしてこんなにも焦がれる。これじゃあ、まるで...」
これじゃあ、まるで...
まるで...
神威は何かを振り払うように深呼吸をすると、上着を脱ぎ捨て腕立て伏せを始めた。
「前だけ見ろ。振り返るな。」
頭を空にし、無心に取り組む。
星の見える部屋に、神威の息遣いだけが響いた。
、