皓月千里

□第五訓
9ページ/9ページ











強さを極めれば、あらゆる物事を肯定出来るようになるのだと思っていた。



何物にも囚われず、俺を止められる奴なんて、この広い銀河を探してもいやしない。











けれど実際は違い、力を得る度に邪念が増えていく。









自分でも制御できないほど、特定のものに固執していく。













脳裏を過る金糸の髪。







「どうしてお前は離させてくれない。どうして掴みたくなる。どうしてこんなにも焦がれる。これじゃあ、まるで...」









これじゃあ、まるで...








まるで...












神威は何かを振り払うように深呼吸をすると、上着を脱ぎ捨て腕立て伏せを始めた。











「前だけ見ろ。振り返るな。」











頭を空にし、無心に取り組む。










星の見える部屋に、神威の息遣いだけが響いた。











次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ