皓月千里

□第六訓
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「なんだもう半分を切ったのか。」

「明日補給する必要がある。光学迷彩ってのは馬鹿みたいにガソリン食うからな、燃費が悪いったりゃありゃしねェ。」

「だったら明朝、宇宙空間で待機させている隊に連絡しとくか。」

「…長期戦になるとでも?」

「念には念を、だ。この星での俺たちの運の悪さは痛いほど身に染みている。」


阿伏兎はそう言いながら、自身の左腕を少し上げた。

氏厳が苦笑いをしていると、自動ドアがシュッと開き、入ってきた李典が声をあげた。


「副団長、戻ったぜ!」




李典の数秒後に現れた神威は、首をコキコキと鳴らしながら操舵室へ入ってきた。

彼の後ろには、高杉、武市、万斉、木島の姿もある。


神威はその足で部屋の隅にある自動販売機へと向かう。




高杉は口から煙をスゥーと吐くと、武市が口を開いた。




「実は、急遽作戦実行を前倒しすることになりました。さっそくですが明朝から動き出す予定です。」



武市が言うと、阿伏兎は顔を引きつらせながら李典を見た。



「団長の奴、やりやがったんスよ。」


李典は項垂れながら神威を指差す。


「こんなこったろうと思ってたぜ。氏厳、燃料の連絡今からしとけ。」

「はは、アイアイサー。」



コーヒーを啜りながら、神威は皆へ向き直る。


「俺のおかげで晋助の傀儡へ中央から向けられていた目を逸らすことが出来た、の間違いだろう。しかも作戦変更は俺は関係ない偶然。」


「で?その明朝からの作戦とは?」


神威の反論は軽く流して、阿伏兎は武市へ声を向ける。



「明日未明に徳川茂々が江戸から京へ動くとの情報が入ったのです。どうやら影武者を使った陽動作戦のようで、経路は陸、海、空の三つ。そして護送隠蔽のために城にも。」


「へぇ〜すげぇな忍の諜報能力は。敵(奴ら)の作戦筒抜けじゃねーか。」

「で?アタリはどれなんだ?」


師団員たちの視線が高杉に注がれる。



「どれだっていい、要は年末のゴキブリ退治と一緒だ。事前に忍(バルサン)を仕込んでおいて、ゴキブリ(敵)が踠き出てきたのを俺たちがぶっ叩く。
俺たちは海路から行く、あんたらにゃ空路を任せる。もし空が外れでも、戦艦(船)がありゃ他への移動も迅速に行える。」











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