皓月千里
□第十訓
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第十訓
「鬼兵隊最後の日」
「先に行くぞ!必ず来い!.......オイ!聞こえてるか⁉︎あークソッ切れた!」
阿伏兎はブンブンと通信機を振ってみるが、通話は再開しなかった。
阿伏兎は通信機をポケットへ入れると顔を上げた。
「発つぞ!氏厳!」
「了解!!」
「残っている部隊は⁉︎」
「ニ、五、六、八、十番部隊です!」
「オイオイ...半分になっちまってるじゃねェか。」
南天楼の爆風に押されるように出立した第七師団の旗艦と鬼兵隊の船は、猛スピードで南天楼から距離を取った。
窓ガラスからは、爆発を繰り返す南天楼が見える。
すると息つく暇もなく砲弾が飛んできた。
向かう方向には春雨の艦隊が待ち受けている。
容赦なく撃ち込まれる砲弾に、パラパラと剥がれた天井の粉が降ってくる。
「やれやれ。奴等、一匹残らず夜兎(うさぎ)を狩り尽くすつもりか。」
阿伏兎はフロントモニターを眺めながら呟いた。
「俺達ゃ絶滅危惧種だぜ。ちったぁ優しくしてくれてもバチは当たらねェってのによォ。」
「いや、よく俺達の扱いを心得てるじゃないか。
阿伏兎、兎はさびしいと死んじゃうんだ。賑やかな戦場(あそびば)を用意してくれた敵に感謝の意を送らなくちゃね。」
阿伏兎の隣で言った神威は殺意のこもった表情で口角を上げる。
「春雨(奴ら)の戦い方が明らかに変わった。指示を出す上層部が誰か外部のものと手を組んだに違いない。」
「面白いじゃないか。このまま敵の旗艦へ突っ込め。そいつの顔を拝見しに行こう。」
「団長ォ!!」
「眼前に敵がいるなら、その全てを薙ぎ倒す。それが俺たちだろう。」
神威が言うと、阿伏兎は大きな溜息を吐いた。
珍しく阿伏兎が反論しなかったのは、確かにもう前に進むしか道がないからだ。
逃げも隠れもしない。
命ある限り戦い続ける。
それが第七師団だ。
他の師団員達も番傘を固く握りしめる。
「さあ、出撃だ。」
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