皓月千里
□第九訓
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第九訓
「其の時」
「いけるか!?」
「こっちはエネルギー圧正常値。」
『セルは回ってる。ブラシが短くなってんのかも知れねェな。』
「ったく、こんなことになるなら金があるうちに全体整備しとくんだったな。」
「今更言っても遅えだろ。俺がセル回すから誰か中に入って、同時にバネのところ叩け!軽くで良い、エンジンがかかるまで叩き続けろ!」
「狭ェな、紫音入れるか?その出っ張ってるところだ。」
エンジンルームにある狭い隙間に身を入れた紫音はハンマーを受け取った。
師団員がエンジンの起動装置を手動で回すタイミングに合わせて、ハンマーで指定された箇所をコンコンと軽く叩く。
それを数回繰り返すと、ブォンと大きな音が鳴り、戦艦のエンジンがかかった。
辺りにいた師団員達は皆「おぉ。」と驚きの声を上げる。
一方。
操舵室では、エンジン起動により復旧したモニター等で離陸準備を早急に進める。
忙しなく動く師団員の横で、腕を組んだ阿伏兎は足を揺らしながら、窓の外を睨んでいる。
「鬼兵隊は?」
「彼方も船が復旧し、高杉が戻り、無事離脱を開始したようです。」
「そうか。」
遠くの方で、猛スピードでこちらに駆けてくる集団を目視で確認する。
「よし、来たぞ。団長が戻り次第、俺達も離陸だ。」
阿伏兎が言うと、操舵室・室長の氏厳は頷き、部下達に細かい指示を出し始めた。
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