皓月千里
□第九訓
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「各艦、砲撃で押し通れ!あと少しで南天楼を奪取できる!」
第七師団、鬼兵隊の艦隊は電光石火の勢いで、春雨の拠点の一つ、南天楼に襲撃した。
予想していた通り警備は脆弱で、こちらの武力が敵を大いに優っていた。
とはいえ、度重なる追手からの襲撃で戦艦はボロボロ。
南天楼内へ侵入を成功させると、戦艦を安全な場所へ停泊させ、第七師団は直ちに戦闘班と修繕班に分かれ動き出そうとしていた。
「では予定通り一、二、三番隊は南天楼内を制圧にかかれ。」
『了解。』
「残りも予定通りに。」
紫音達は駆け足で南天楼内を探索する。
しかし、違和感がひとつ。
「おい、紫音。」
『あぁ、おかしいぞココ。』
紫音が足を止めると、他の皆も立ち止まる。
どこかで戦闘の音はするものの、物凄く静かだ。
『敵がいねェな...』
「嵌められたか⁉︎」
紫音は通信機で阿伏兎に連絡とった。
《おー、紫音か。上部はどうだ。》
『こっちはもぬけの殻だ。なんか変だぞ、嫌な予感しかしねェ。』
《そうか、地下も同じだった。今すぐ旗艦に戻れ。》
『分かった。
オイお前ら、下に降りるぞ。階段は、』
そう紫音が辺りを見回しながら言った瞬間、通路に爆音が響き、大きな振動で通路が揺れた。
「⁉︎」
『下からだ!阿伏兎!大丈夫か⁉︎』
通信機のモニターの映像が途切れ、音割れを起こす。
《ぐぅッ、戦艦がやられた!旗艦で脱出する!》
『間に合わねェ!先に行け!!』
通信機からは爆発音と隊員たちの怒号が聞こえる。
紫音は一番隊の面々に目配せをし駆け出した。
「エレベーターは使えない!階段は⁉︎」
「こっちだ!」
グラグラと南天楼自体が揺れ始め、他の場所でも爆発が起きていることが分かる。
《...ザザッ、..こえ...か!聞こ...か⁉︎...さ、く....、かな.....................》
『あ〜〜クソッ!!切れた!』
そのまま通信機はうんともすんともいわなくなった。
揺れる中、来た道を疾走していると、今度はすぐ近くで大きな爆発があった。
通路が斜めに傾き、紫音たちは一斉に体勢を崩した。
爆炎が上がり、粉塵で一瞬にして視界がゼロになる。
『何かに捕まって傘を出せ!』
「爆風に飲み込まれるぞ!!」
「ぐぁぁあああ!!」
そのまま各所で爆発を繰り返し、南天楼はあっという間に火の海となった。
第七師団は大勢の師団員が漆黒の宇宙空間へ投げ出され、南天楼と共に艦隊の半数が塵となった。
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